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(答申原案)
青少年が安心して育つ環境を、大人が責任を持ってつくるために
―有害情報の効果的な規制、青少年の深夜外出の防止策等について― (第25期東京都青少年問題協議会答申)
平成15年12月24日 東京都生活文化局
目次
はじめに
第1章 これまでの歩みと深刻な現状
1 都における青少年健全育成の経過
2 深刻な現状と対策見直しの必要性
第2章 青少年が健全に育つ環境をつくるために
1 有害情報への対応
(1)不健全図書の現状と課題
(2)図書、ビデオ等の自動販売機等の規制
2 生活時間帯の変化等への対応
(1)青少年の深夜外出と検討すべき課題
(2)深夜立入を制限する施設について
第3章 青少年が犯罪を犯すことを防ぐために
1 危険な刃物類の購入、所持と課題
2 古物買受け等の現状と課題
第4章 青少年が被害者となることを防ぐために
1 スカウトの規制
2 生セラ等の買受け等の規制
第5章 対策の実効性を確保するために
1 深夜立入制限施設等への調査指導体制の充実
2 書店、コンビニ等への調査指導体制の充実
3 緊急な指定への対応
4 規定の整備
おわりに
───────────
はじめに
すべての都民は、すべての子どもの幸せを希求しており、そして大多数の子どもたちは健やかに育っている。
この願いを実現するために、東京都は、これまでも、青少年の健全育成のために様々な取り組みを行なってきた。その基本方針は、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」(以下、「都健全育成条例」という。)の前文に「われら都民は、心身ともに健全な青少年を育成する責務を有することを深く自覚し、青少年もまた社会の成員としての自覚と責任をもって生活を律するように努めなければならない」とあるように、大人に責任ある行動を求めるとともに青少年自身の自覚を促すことにある。
具体的には、本協議会の答申や意見具申を踏まえ、不健全図書の規制や深夜立入の制限などにより環境の整備を進めるとともに、次代を担う子どもたちに対し、親と大人が責任をもって正義感や倫理観、思いやりの心を育み、人が生きていく上で当然の心得を伝えていく取り組みである「心の東京革命」を提唱し、社会全体の運動として推進してきた。
しかし、昨今、大人自らの生き方を反映した子どもを取り巻く環境は、どうであろうか。子ども自身の自覚や規範意識とその具体的表れである行動はどのように変化してきているであろうか。大部分の都民は、「現実は、憂慮に堪えないものがあり、危機的状況にある」という認識を共有していると考えられる。
このような状況を受け、平成15年10月3日に「子どもを犯罪に巻き込まないための方策を提言する会」から、東京都に緊急提言がなされた。その提言では、精神的に未熟な青少年の健全な育成にとって妨げとなる、有害情報や有害環境の浄化は一刻の猶予も許さない状況にあるとの認識が示されている。
この喫緊の課題に対処するため、第25期東京都青少年問題協議会は、平成15年10月28日、東京都知事から、都健全育成条例の改正について、不健全図書類の効果的な規制のあり方、その他青少年の深夜外出の防止方策等の事項を検討するよう諮問を受けた。
検討を始めるに当たって、インターネットにおけるわいせつ情報等の氾濫が問題となった。膨大な量と画像の著しい卑わい性、動画が視聴できること、さらには青少年が容易にアクセスできることなどから、青少年の健全育成に与える影響が大きいことについて全委員の意見の一致を見たが、一方、それを規制することが極めて困難であり、現在、議論を重ねても短期間で実効性のある方法を見出すことが困難である点でも、大方の意見が一致した。
協議会委員の中には、インターネットに比べて図書の持つ影響は小さいという認識から、図書だけの規制を検討しても無意味であるという意見もあったが、不健全な図書の持つ影響を無視して良いとまでは言えないこと、また、できる所から一歩ずつ着実に対応を進めるべきであるということから、不健全図書類への対応も含めて協議会として検討することとした。
青少年を健全に育成するための方策には、これさえ実行すれば全てうまくいくというようなものは存在しないが、第24期協議会の中間答申および今回の答申では、大人と子どもの世界の区分け(ゾーニング)という視点を特に重視して検討した。大人に許されることの全てが、子どもにも認められるわけではない。大人には認められているが、精神的に未熟な青少年が触れるべきでない情報、行うべきでない行動を明確にすること、すなわち、子どもの世界と大人の世界を、大人が責任をもってゾーニングすることが、有効と考えたからである。
以下の答申は、この視点から、青少年が安心して育つ環境を、大人が責任をもってつくるために、検討された成果である。
第1章 これまでの歩みと深刻な現状
1 都における青少年健全育成の経過
東京都は、昭和28年に知事の諮問機関として東京都青少年問題協議会を設置し、有識者の意見を取り入れ、青少年施策の適切な推進に努めてきた。
本協議会は、この付託に応えるべく、都健全育成条例の制定、自由時間や放課後を豊かなものにする方策、自立と社会性を育むための方策などについて、答申や意見具申を行い、都も、これを真摯に受け止めて施策化されてきた。近くは、第24期協議会の答申に基づき、急速に進展するメディア社会化への対応、具体的には、大人の責任としての有害情報のより有効な制限と、青少年自身のメディアリテラシーの向上が図られた。
昭和39年には、都健全育成条例が制定され、東京都青少年健全育成審議会(以下、「健全育成審議会」という。)を設けて不健全図書の指定を行うなど、青少年を取り巻く環境の改善を図ってきた。
また、都は、平成12年に次代を担う子どもたちに対し、親と大人が責任をもって正義感や倫理観、思いやりの心を育み、人が生きていく上で当然の心を伝えていく取り組みである「心の東京革命」を提唱し、心の東京革命推進プラン(平成15年改訂)に基づき、社会全体の運動として推進してきた。
「心の東京革命」では、「大人は、自らの生き方を改めて見直すとともに、未来を支えて行く子どもたちに対し、どのような社会にあっても『基本的ルール』があることなどを大人自らの行動を通して教えていかなければなりません。」という考え方が提唱されているが、これは、冒頭に紹介した都健全育成条例の精神と軌を一にするものであり、広く都民が共有する思いと言えよう。
2 深刻な現状と対策見直しの必要性
しかし、青少年を取り巻く環境のあり様は、どうであろうか。子ども自身の意識や行動はどのように変化してきているであろうか。
書店やコンビニには、大人でも正視できないような雑誌類が、青少年がすぐ手にとることができる状態で並べられ、街角にはアダルトビデオの自動販売機が設置され、また、繁華街には、少女を風俗産業に誘う大人がいるなど、子どもを非行や犯罪に誘う要因が以前と比べ格段に広がっている。
一方、万引きを犯罪と思わない子どもや風俗産業に誘われることに抵抗感を持たない少女など、青少年の意識も大人には到底理解しがたいものとなって来ている。日々の行動の面でも、夜型社会が進む中で深夜に子ども達があてもなく徘徊し、たむろしたり、以前にはなかったカラオケボックスなどで深夜まで過ごす青少年もいる。また、長崎・沖縄の中学生による殺人事件や渋谷の少女監禁事件に見られるように、犯罪の加害者や被害者になる子どもたちが増加している。
このような現実と家庭や地域の子育ての力の低下があいまって、昨今の青少年問題は座視し得ない段階に達しており、その対策に早急な見直しが求められている。
第2章 青少年が健全に育つ環境をつくるために
1 有害情報への対応
(1)不健全図書の現状と課題
@不健全図書の規制に関する基本的考え方
◎青少年健全育成の視点
不健全図書に関する規制は、青少年の健全育成という公共の福祉の観点から、必要最小限度の規制を行うものであり、成人への販売を不当に規制するものではない。したがって、規制の内容が青少年の健全育成という目的に照らして相当なものであれば、出版、表現の自由の不当な侵害には当たらないと考えるべきである。
◎社会共通の認識
岐阜県条例に関する平成元年の最高裁判例にあるように「いわゆる有害図書が、一般に思慮分別の未熟な青少年の性に関する価値観に悪影響を及ぼし、性的な逸脱行為や残虐な行為を容認する風潮の助長につながるものであって、青少年の健全な育成に有害であること」は、社会共通の認識になっていると考えられる。判決から15年が経過し、その間にいわゆるヘアー解禁など大人社会の性表現に関する考え方が大きく変化したことは事実である。しかし、青少年の健全育成に関する考え方としては、現在も、この判例が有効と考えるべきである。
A都内における不健全図書の販売の現状
平成14年に流通していた雑誌は、出版月報によると3,400余誌あった。このうち著しく性的感情を刺激し、青少年の健全な育成を阻害すると思われる不健全図書は、出版業界関係者によると350から500誌程度と推測されている。そのうち、販売店員や購買者が区分、判断しやすいように、業界自ら大人向けであるというマークを付けた表示図書は約150誌であるため、他の不健全図書は、何らの表示もされずに出版、販売されていることになる。立入調査の結果によれば、これらの無表示の不健全図書が、都内の書店やコンビニエンスストア(以下、「コンビニ」という。)等の約3割の店舗で、一般図書と区分されずに陳列されており、青少年を健全に育成する上で、極めて悪い環境にある。
B不健全図書の指定制度
青少年の健全な育成を阻害する不健全図書の指定制度には、個別指定制度と包括指定制度がある。
◎個別指定制度の概要、長所、短所
【概要】
個別指定制度とは、不健全図書類を指定する場合に、個別の図書類ごとに審査・判断する方式で.ある。ほとんどの都道府県では、公平性を確保するため、諮問機関に諮り、その意見を踏まえ指定している。なお、東京都では「健全育成審議会」に諮る前に、自主規制団体から意見を聴取している。
【長所】
個別指定制度は次の点が長所と言われている。
○指定図書の具体名が公表され、かつ販売店に通知されるため、下記のことが期待できる
ア.青少年への販売禁止が遵守されやすい。
イ.容易に区分陳列することができる。
ウ.販売禁止、区分陳列の指導も容易である。
○また、第三者機関の客観的な意見を聞くことにより、公平・適正な指定を期することができる。
○他の道府県の指定にはない、東京都の個別指定に特有の効果として、下記の自主規制が実施されている。(詳細は、自主規制の項を参照)
ア.大手コンビニは、ただちに撤去する。
イ.大手コンビニは、2回連続で(中には1回の指定での例もある)指定された図書は、次号から取扱わない。
ウ.連続3回若しくは年間5回指定された図書は、次号から実際上、市場に流通することは困難になる。この効果は、書店、コンビニ等、ほぼ全ての図書類販売業者に及ぶものである。
○上記の自主規制との連動及び指定図書名が公表されることにより、出版社への抑止効果がある。
【短所】
個別指定制度は次の点が短所と言われている。
○多種、多量の図書類を全て把握し、指定するのは困難である。
○指定には一定の手続きを踏むため、時間を要する。
◎包括指定制度の概要、長所、短所
【概要】
包括指定制度とは、不健全図書類を指定する場合に、あらかじめ条例に、卑わいな姿態が、雑誌等については、一定ページ数以上又は総ページの何分の1以上、ビデオ等映像については、描写時間が連続何分以上又は合計何分以上等と定めた、分諏的な基準に該当するものは、審議会の議を経ることなく、自動的に不健全図書類とみなす方式である。
【長所】
包括指定制度は次の点が長所と言われている。
○多種、多量に販売される図書を幅広く指定できる。
○週刊誌など販売期間の短い図書でも店頭に置かれた時点で予め指定できる。
【短所】
包括指定制度は次の点が短所と言われている。
○指定図書の具体名が明示されず、販売店に通知もされないため、十分に立入調査が行われない限り、下記の問題が生ずる。
ア.販売店が青少年への販売禁止を遵守することが困難である。
イ.区分陳列することが困難である。
ウ.販売禁止、区分陳列の指導も困難である。
○その結果、理論上の指定図書数は多いが、実際上は、多くの不健全図書が、青少年が容易に閲覧、入手できる状態で店頭に並ぶこととなっている。
○販売店に対する指導が行き届かないと、各販売店に不健全性の判断を委ねるので取扱にばらつきが生じる。
○指定図書の具体名が不明なため、区分陳列等の指導を行う立入調査は、個別指定に比べて、多くの労力、時間を要する。
○指定図書名が特定、公表されないため、出版業界に対する規制効果はない。
C自主規制の状況
【概要】
出版業界では、販売店での区分陳列を容易にするためのマークをつける表示図書制度を実施している。
また、東京都の不健全図書指定を連続3回若しくは年間5回受けた図書は、次号から「18歳未満の方々には販売できません」という帯紙を付けることとされている。帯紙が付くと「取次業者は、あらためて書店に注文数を照会してから配本する」という取り決めもあり、実際上、市場に流通することは困難になる。
さらに、大手コンビニは、東京都の個別指定に限って、指定を受けた図書は撤去し、2回連続で(中には1回の指定での例もある)指定された図書は、次号以降、取扱わない。また、表示図書類は取り扱わない。
【長所】
自主規制は次の点が長所と言われている。
○表示図書制度は、適切に運用されれば、週刊誌のように販売期間が短いものも含め、多種、多様に出版される図書類の区分陳列に非常に有効である。
○帯紙措置とコンビニの自主的な販売規制は、個別指定の効果を出版社の自己規制に及ぼす面で有効である。
【短所】
自主規制は次の点が短所と言われている。
○表示図書制度は、業界の自主規制であり、青少年の健全な育成を阻害するおそれがある図書か否かについて、出版業界と一般都民の感じ方に乖離があるため、店頭に表示されない不健全図書が並ぶ結果を招いている。
○帯紙措置とコンビニの自主的な販売規制については、現状では、個別指定の数が限られている分、有効性が低くなっている。
D東京都の対応状況と問題点
◎規制方法
東京都では条例制定以来、個別指定制度を採用している。これは、業界の自主規制を尊重し、規制を要する場合は最小限に止めるという都健全育成条例の基本的精神及び、公平性、適正性を重んじ、公平で専門的な審議会の判断を経て個別に指定するという基本的考え方に基づくものである。個別指定と自主規制の連動により、他の道府県の指定にはない効果を有する制度となっている。
◎問題点
現実には、指定されない不健全図書が多いため、本来の効果を発揮していないのではないか、その結果、多くの不健全図書が、青少年が容易に閲覧、入手できる状態にあるのではないか、と危惧される。
E他道府県の対応状況
東京都と健全育成条例がない長野県を除く全道府県は、包括指定制度を採用している(秋田県は、平成16年4月1日施行)。一方、区分陳列違反に関し、17府県は罰則を設けて規制しているが、23道府県は罰則なしの規定にとどまり、5県は努力義務しか規定していない。また、条例または規則で区分陳列の具体的方法を示しているのは7都府県にとどまり、38道府県は、販売店に対する指導の基準となる具体的区分陳列方法を定めていない。
F提言
◎施策の方向性
不健全図書への対応は不十分である。また、その氾濫状況は目に余るものがあるとの意見も少なからずあった。このため、その規制については、早急に、実効性ある改善がなされなければならない。,
一方、不健全図書であっても成人には販売できるということが前提であるため、青少年の知る権利、健全に成長発達する権利を守る立場から、青少年の健全育成という条例の詞的に沿った範囲において必要かつ、合理的な施策を、これまでの規制方法の実効性を反省しつつ、早急に検討し、実施する必要がある。
◎これまでの個別指定制度の実効性の検証と改善
東京都の個別指定は、自主規制と連動することにより、包括指定や他の道府県の個別指定にはない強い効果を持っているが、まさにその故に、指定について過度に抑制的になってきたのではないか、特に、健全育成審議会に諮問する指定候補図書の選定段階において、過度に厳しく制限してきたのではないか、との危惧がある。
本来、指定の適否の判断は健全育成審議会が、その主体性を持って行うべきものであり、その判断と選定の対象となる候補図書の選定にあたっては、透明度の高い基準を設け、適切な諮問を行う必要がある。
業界の自主規制との調和を図りつつ、青少年の健全な成長と発達を守るべく都健全育成条例で採用された東京都の個別指定制度は、多くの長所を有している。その長所を十全に発揮するべく、現在の手法の実効性を速やかに検証し、改善する必要がある。
また、青少年の健全な成長と発達を守る立場から、青少年の容易な閲覧を防ぐため、指定図書は、区分陳列する場合であっても包装して販売することを罰則を設けて義務づけるべきである。
◎自主規制の改善
区分陳列を容易にするためのマークを、出版社が自主的に付ける表示図書制度は、適切に運用されれば、青少年が不健全図書を入手しないための有効な制度たり得ると考えられる。
しかし、現実には、多くの不健全図書が表示図書とされずに店頭に陳列され、個別指定される現状にあるとの指摘を考慮すれば、出版業界には、表示図書制度の運用実態と一般都民の感覚との乖離を深く自省し、適切な運用に向け、制度運用の抜本的な見直しを早急に行うことが求められよう。
また、青少年の容易な閲覧を防ぐため、出版社が不健全図書を包装し、販売店は包装されていない不健全図書は販売しない、自主規制の新設が求められる。
なお、自主規制の実効性を担保するために、条例において自主規制を促す規定を設けることも検討すべきである。
◎包括指定について
個別指定には、前述の通り指定数や指定のタイムラグという構造的な限界がある。自主規制も、全ての関係者が遵守するという保証はない。
よって、「多種、多量に出版販売されている図書のうち、量的に規制の対象となるものは幅広く指定できる」「発行間隔の短い週刊誌等についても指定が可能である」という包括指定の長所は、個別指定や自主規制の欠点を補う点から一定の積極的評価をすべきであろう。
一方、包括指定では個別の指定図書名が明示されないことから、運用段階での実効性を担保するための十分な指導体制を確保することは難しい。また、内容によらず量的な規制だけで図書の不健全性を100%問うことや審議会の議を経ないで不健全図書指定がなされることの是非等の問題点もある。
これらのことを総合的に勘案し、当面は、包括指定の導入は見送るべきである。
(2)図書、ビデオ等の自動販売機等の規制
@都内における自動販売機の現状
都内には、平成15年10月21日現在、70業者が346箇所1,116台の自動販売機等を設置している。総台数は減少傾向にあるが、平成15年8月時点で、学校施設周辺200似以内に109箇所347台(約30%)、同100諮以内に36箇所116台(約10%)が設置されている。
図書類自動販売機等の業界には、営業者の任意団体である日本V・B自動販売機協議会(「V・B」とは「ビデオ・ブック」のことである。以下、「V・B協議会」という。)が存在し、行政や住民との話し合いの窓口になって、自主規制の推進や住民苦情に対応している。しかし、東京都におけるV・B協議会加盟業者は、26業者(約37%)、台数にして867台(約78%)にとどまっているため、自主規制が徹底されにくい状況にある。
A都の対応状況と問題点
平成13年の条例改正で、自動販売機等の設置者等の届出と届出内容の表示及び指定図書類の収納禁止等を義務づける規制を行ったが、第19期青少年健全育成審議会において、その収納物のほとんどは不健全なものであり、かつ青少年が容易に購入できる状態にある、との指摘がなされた。
この状況を改善するため、東京都の指導により、V・B協議会は、平成14年11月から、自動車運転免許証を挿入しないと収納物を購入できない年齢識別機等を設置することにより、青少年が不健全な図書類を購入できないようにする自主規制を実施した。
しかし、自動販売機の約1割には、平成15年10月においても年齢識別機等が設置されておらず、未設置業者は主にV・B協議会の非会員業者で、同協議会及び東京都の再三に渡る指導にも応じないため、業界による自主規制は限界に違しているとの指摘がなされている。また、年齢識別機等を設置した業者には、未設置業者との間に不公平が生じているとの認識がもたれている、という。さらに、年齢識別機等の稼働率は、昼間帯は約83%、夜間帯は約57%にとどまり、今なお、青少年が容易に購入できる状態にあるため、改善策が必要となっている。
◎地域住民からの苦情状況
一方、V・B協議会から出された報告によれば、平成14年1月から同15年10月末までの間に、106箇所241台の自動販売機が撤去又は移設されているが、その理由を見ると、地域住民、学校からの苦情・要請によるものが106箇所中56箇所と過半を占めている。このように、V・B協議会加盟業者が地域住民等から苦情があることから、学校周辺への新設を自粛しているにもかかわらず、自動販売機自体を子どもたちに見せたくないと思っている地域住民等が相当数いることがうかがわれる。
B他道府県の対応状況
ほとんどの道府県では、東京都と同様の届出制、表示制、収納規制が条例により定められており、有害指定図書等を自動販売機等に収納することは禁止され、かつ、収納してある図書は撤去しなければならないこととされている。また、大阪府など3府県では、学校等から一定距離に設置しないことを求める努力義務を課している。
一方、図書類の規制の項で述べたように、東京都、長野県を除く道府県では、包括指定を採用しているため、自動販売機等には有害図書類は収納されないはずであるが、実効性ある規制は困難な実状にある、と言われている。
C提言
自動販売機は対面販売でないことから、青少年が成人向けビデオ等を容易に入手できるため、都は、条例で各種の規制を設け、V・B協議会も自主規制で年齢識別機等の設置を進めてきた。しかし、年齢識別機等を設置していない自動販売機が1割程度残っていることや年齢識別機等を設置していても稼働させていない自動販売機が多数あり、いまだに青少年が不健全図書類を容易に購入できる状態にある。よって、この問題を解決するため、年齢識別様等の設置とその24時間稼働を条例で義務づける必要がある。
また、現在自動販売機に取り付けられているマジックミラーでは、夜になれば収納物が見えてしまう状態にあるため、卑わいなパッケージ写真や表紙が、青少年はもとよりそれを見ることを好まない大人にも見えないよう、年齢確認をしないと機械内部の商品が見えない装置の設置とその24時間稼働を条例で罰則を設けて義務づける必要がある。
なお、これらの機器、装置の設置義務については、経過措置を設けることが適当
である。
さらに、学校など青少年が専ら利用する施設の周辺への自動販売機の新増設の制限について、現在の自主規制による自粛より、一歩踏み込んだ措置を講じることも検討すべきである。また、自動販売機設置業者は、厳しい住民感情を真摯に受け止め、学校周辺等に既に設置してある自動販売機についても、自主的に撤去を進めるべきであるとの意見も出された。
2 生活時間帯の変化等への対応
(1)青少年の深夜外出と検討すべき課題
@都内における深夜外出の現状
いわゆる24時間都市化が進行する中で、現代人の生活時間帯は深夜に及ぶ傾向が強まっている。青少年も例外ではなく、渋谷などの繁華街で深夜に徘徊し、あるいは、カラオケボックスや漫画喫茶・インターネットカフェで夜通し過ごすという問題行動が生じている。
A都の対応状況と問題点
東京都では、深夜外出を条例で制限することは、都会での実効性が疑問視されて、見送られてきた。
しかし、何日も帰っていない青少年を補導して連絡しても、「携帯電話で連絡できるので家出ではない。」「いつものこと。心配していない。」「引き取りには行かない。自分で帰ってくるように言って欲しい。」と答える例もあるなど、保護者の責任感の低下が見られる、との指摘もある。また、過去1年間の深夜徘徊の経験回数とひったくりの実行可能性との間に相関関係が見られたという調査もあり、深夜徘徊など軽微な非行を繰り返していくうちに犯罪につながっていくことも考えられるとの意見や、深夜徘徊する青少年が犯罪に巻き込まれる危険性も考えられるとの意見があった。
一方、深夜徘徊と犯罪との関連は不明であるとの意見もあった。
ひったくりを「絶対しないと思う」と答えた子ども4,475名の内訳
過去1年間の深夜徘徊回数 Yes回答者の内の割合%
3回以上 6.3%
1〜2回 15.6%
0回 78.1%
合計 100.0%
ひったくりを「してしまうかも知れない」と答えた子ども389名の内訳
過去1年間の深夜徘徊回数 Yes回答者の内の割合%
3回以上 17.8%
1〜2回 25.7%
0回 56.5%
合計 100.0%
(平成14年、科学警察研究所少年研究室調査)
B他道府県の対応状況
東京、長野、大阪、島根以外の43道府県では、青少年健全育成条例で深夜外出を制限する何らかの規定を置いている。多くの道府県は、保護者に対して「特別の事情がある場合の外は、深夜に青少年を外出させないように努めなければならない。」という趣旨の条件付きの努力義務を課している。また、「何人も、正当の理由なく保護者の嘱託又は承諾を得ないで、深夜に青少年を同行して外出してはならない。」という趣旨で、罰則を設けて禁止している自治体も多い。
C提言
深夜に外出する青少年が、昼間と違い、周囲の日の行き届かない場所で犯罪に巻き込まれることを防ぐことは急務であると思われるが、この問題を解決するために、子どもを深夜外出させない努力義務を親に課すことに、即効的な効果がないことも確かであろう。
しかし、深夜外出をして徘徊を繰り返す青少年に対する保護者の責任感が低下している例が見受けられる今日においては、条例で子どもを深夜外出させない努力義務を親に牒すことにより、親の責任を明確にし、その責任の自覚を促すことは、無駄ではない。
また、青少年を犯罪に巻き込まれる危険から守るために、「大人が、正当の理由なく保護者の嘱託又は承諾を得ないで、深夜に青少年を同行して外出すること」も禁止すべきであるが、年齢による青少年の生活実態の変化を考慮し、罰則を設けるのは16歳未満の青少年を同行した大人に対してのみとすべきである。
さらに、青少年を健全に育成するためには地域社会の協力が不可欠であることから、大人、とりわけコンビニやスーパーマーケットなど深夜に営業する事業者には、深夜徘徊する青少年に帰宅を促す善導が求められる。
(2)深夜立入を制限する施設について
@都内における深夜立入施設の現状
いわゆる「夜型社会」の進行により、娯楽施設を中心に深夜に営業する様々な業態の施設が増加している。また、青少年が、カラオケボックスや漫画喫茶・インターネットカフェで夜通し過ごしたり、コンビニの前にたむろしたりする状況も見られる。
A都の対応状況と問題点
東京都における深夜立入制限施設は、現在、興行場、ボーリング場、スケート場及び水泳を行わせる施設であり、昭和39年の条例施行後、変更されていない。
しかし、スケート場及び水泳を行わせる施設は、深夜営業を行っているケースは少なく、規制が実態に合わない状況になっている。
一方、カラオケボックスや漫画喫茶・インターネットカフェについては、下表にあるように、その補導状況を見ると、非行の場になっているにもかかわらず深夜立入制限施設とされていないことに問題があると思われる。
深夜における補導人数(平成14年、警視庁調べ)
カラオケボックス 深夜飲食店(漫画喫茶等を含む)
深夜徘徊 219人 42人
無断外泊・家出 151人 3人
漫画喫茶・インターネットカフェにおける補導人数は、カラオケボックスのそれと比べて少ないが、ある程度プライバシーが保たれる個室化していること、軽易な食事ができること、施設によってはシャワーが完備している店もあることなどから、青少年の無断外泊や家出に好都合の場であると考えられる。
このように条例で規定されている施設が、社会の実態に合わなくなってきているとの指摘がなされている。
◎業界の自主規制の状況と問題点
カラオケボックスについては、業界団体である東京カラオケボックス事業者防犯協力会が、「運営管理基準」等を定めて自主規制を行い、「午後10時から日の出時の間に18歳未満の者を入場させない」こととしているが、都内店舗数は1,109店(平成15年9月30日現在)のうち業界団体加盟店は509店にとどまり、600店と過半を占める非加盟店には、業界の自主規制の効果は及んでいない。
漫画喫茶・インターネットカフェは、日本複合カフェ協会が「運営ガイドライン」を定めて自主規制を行い、「16歳未満の者は午後8時以降、18歳未満の者は午後10時以降の利用を認めない」こととしているが、都内店舗数は370店(平成15年9月30日現在)のうち業界団体加盟店は105店にとどまり、265店と総数の3/4を占める非加盟店には、業界の自主規制の効果は及んでいない。
B他道府県の対応状況
31道府県において、青少年を深夜に立ち入らせない義務を、興行場、遊技場等に対して牒している。規定方法は、条例で規定している道府県、規則で規定している県など様々である。
カラオケボックスを指定している県は10県で、いずれも規則で定めているが、現在、漫画喫茶・インターネットカフェを指定している道府県はない。
C提言
深夜立入を制限する施設の指定を、社会状況の変化に応じて適切に見直しすべきことは、言うまでもない。
カラオケボックス及び漫画喫茶・インターネットカフェは、都健全育成条例制定時にはなかったものであるが、青少年溜まり場、深夜徘徊や無断外泊の場となり易い状況がある上、自主規制が及ばない事業者が過半ないしは大部分であるため、指定施設に追加すべきである。
また、条例制定から約40年を経過し、社会変化の速度は比べ物にならないほど速くなっていること、および、東京は、多くの繁華街を抱えるとともに、社会変化の最先端を行く都市であることから、青少年の保護を適切に行うために、臨機応変に深夜立入制限施設の指定が行われるべく、その指定を知事の定める規則に委ねることが適当である。規則に委任するに当たっては、第三者機関の客観的な意見を聞くことにより、公平・適正な指定を期するために、予め東京都青少年健全育成審議会の意見を聞いて、施設指定の改廃を行うべきことを条例で定める必要がある。
なお、時代の変化により、社会通念上不健全な行為の場となる危険性が低くなっていると考えられる施設については、不必要な規制は廃止すべく、指定廃止を検討すべきである。
第3章 青少年が犯罪を犯すことを防ぐために
1 危険な刃物類の購入、所持と課題
@現状と問題点
◎青少年が刃物を持つ理由と危険性
青少年が刃物を持つ理由は、生活の必要性と言うより、「格好がよい」、「刃物に対する憧れ」、「強くなった気がする」などが上げられる。また、一部には、「護身用のため」に持つ者もいるという。このような理由で持ち歩く刃物は、ファッション性が高く、特にポケット、カバンに入れたり、忍ばせることができる小型のものが主流となっている。
しかしながら、日常生活において不必要な刃物を携帯することは、偶発的にあるいは結果の重大性を認識しないままに人を傷つけてしまう危険性があると思われる。
◎青少年の刃物に対する意識
少年非行に関する調査(平成13年11月内閣府政府広報室)によると、20歳未満の回答で、社会的にみて問題だと思う非行は、「刃物などを使った殺傷事件」が49 .2%と最も多く、「刃物などを持ち歩く」についても、19.9%に上っている。また、非行を招くような社会環境については、「少年でも簡単に刃物などを手に入れられる環境である」と答えたものが41.6%と最も多く、その割合は小都市よりも大都市において高くなっている。このように、青少年自身も、不必要に刃物を持ち歩くことや簡単に刃物などを手に入れられる環境については、疑問を抱いていると思われる。
A都の対応状況と問題点
現在の都健全育成条例では、がん具類については、その構造又は機能が青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるものとして指定できるが、刃物類については、条例による直接的な規制はない。平成10年に刃物使用による少年事件が多発したが、都は、販売店の調査、業界団体に対する販売自粛要請、関係団体との連絡会議、青少年に対する教育指導等を短期間のうちに実施し、この状況を自主規制で乗り越えた。
しかし、刃物を取り扱っている販売業界は多岐に渡るとともに、系統的な祖織がないこともあり、その自主規制の実効性については、検討すべき課題も多いものと考えられる。また、現在は、インターネット等によるオークションなど個人が刃物を含む様々なものを売買している状況があり、販売業者に対してのみの規制では、有効な販売規制は難しい。
B他道府県の対応状況
青森、東京、長野以外の44道府県では、条例で刃物類を青少年に対して販売等することを禁止し、違反した者に対して、罰則を科している。他の道府県で指定されている刃物は、主にバタフライナイフ、サバイバルナイフ、ペンナイフなどであり、いずれも日常の社会生活においては携帯する必要のない刃物を指定して、青少年への販売を規制している。一方、指定刃物類の青少年に対する販売規制は、販売業者に対してのみのものであり、販売を業としない者まで規制している県は少ない。
C提言
刃物が使用される犯罪は、結果が重大であり、軽視することはできないため、青少年が安易に不必要で危険な刃物を持つことがないよう、青少年の興味を引き、携帯しやすく、かつ日常生活において所持する必要のない刃物類を指定し、指定された刃物類について、青少年への販売等を罰則を設けて規制する必要がある。また、販売業者の自主規制として、刃物類の販売について、購入者の年齢を確認するなど、年齢に応じた販売をするように指導していく必要がある。
一方、本来、刃物は生活の必需品でもあり、一律に青少年から遠ざければ良いというものではない。未熟な青少年が、人生の入り口で取り返しのつかない失敗をしないように、その使い方や危険性をしっかりと教育することが、まず、必要である。
家庭における親の教育力が低下していると言われているなか、学校などの関係機関や地域社会が連携して、青少年に対する指導啓発を行い、教育と規制が両輪となって、青少年を守り育てていくことが肝要である。
2 古物買受け等の現状と課題
@都内における万引きの現状等
万引きは、自転車盗などとともに、初発型非行と呼ばれ、本格的な他の非行への入り口と言われている。警視庁の統計によると、平成14年の都内の窃盗犯少年のうち万引き犯は2,201人で、自転車盗犯2,318人に次いで2番目となっているが、発覚しても検挙(補導)にまで至らない例も多いという万引きの特性を考えれば、この数字は氷山の一角とも言え、大きな問題と考えられる。
他方、近年、換金の容易な中古品市場の拡大に伴い、コミック本や写真集などを主力商品とする新古書店が各地に店舗を展開し、持ち込まれる品が新しい物であればそれだけ高く買い取ることから、換金目的と考えられる万引き被吉を増大させ、書店の経営の悪化を招くこととなった。
平成14年12月には東京都書店商業組合から、書店等における青少年の換金目的による万引きを防止するため、都議会に対して、古書店や新古書店が、青少年から書籍等を買い取る際に、親の同意確認を行っているかなど自主的な取組状況を把握することと、親の同意確認を義務付けるよう都健全育成条例を改正することについて請願書が提出された。また、日本書店商業祖合連合会は、青少年からの古物買受け等の制限の規定がない、又は、制限から書籍等を適用除外している府県に対して、議会に条例改正を働きかけている。
A都の対応状況と問題点
都健全育成条例は、青少年の健全育成に主眼を置き、規制する事項は最小限にとどめ、都民の自由と権利を不当に制限することのないよう配慮すべきであるという基本的な考え方に基づいている。このため、青少年からの古物買受け等の制限については規制がない。
また、昭和39年の条例制定に際しては、古物商及び質屋の物品取扱については、古物営業法若しくは質屋営業法にもし不備があれば、条例ではなく法律を改正し、強化すべきとの意見もあった。
◎業界の自主規制の状況
古物営業法には、青少年から書籍等の古物買取を禁止する規定はないが、古書業界の自主規制として、東京都古書籍商業協同組合は、青少年から書籍の買取りは原則行っておらず、例外的に買い取るときには、買収金額にかかわらず、「保護者が同行すること」「電話で保護者の同意を確認すること」「保護者同意書を持参すること」のいずれかを行っている。
また、リサイクルブックストア協議会加盟のフランチャイズ方式の新古書店は、条例規制の有無にかかわらず古書店と同様な自主規制を行っているとともに同じ図書が2冊以上持ち込まれた場合は買い取らないことにしている。ただ、同協議会に参加していない新古書店が80%を占めていることも看過できない。
B他道府県の対応状況
40道府県では、青少年からの物品の質受け及び古物の買受け等の制限を規定しているが、このうち19県は対象となる古物から書籍を除外している。また、これらの規制は、保護者が同行する場合、保護者が同意したと認められる場合、当該青少年が保護者の委嘱又はその他正当な理由があると認められる場合においては適用しないとされている。
これらの規制の趣旨は、青少年が物品を売却、質入れすることで遊興費を得て非行等好ましくない行動を防止することにある。また、書籍を規制対象から除外している理由は、学生等が一般的に読み終わった図書を売却し、買い替えすることは日常的に行われており、その目的も勉学等のためであると言われている。
C提言
万引きは、少年犯罪において大きな比率を占め、本格的な他の非行への入り口となる初発型非行とも言われているが、その動機の中には換金目的もある。また、昨今、万引きを犯罪と思わない青少年が増加し、果ては、万引きをして見つかった子どもの親が「金を払えば良い。」「他の店では万引きはない。万引きし易い環境をつくる店にも問題がある。」と言う例すら報じられている。社会の規範意識の信じ難いまでの低下に対して、何らかの意思表示が必要となっている。また、業界団体に加盟していない事業者には、自主規制の効果が及ばないことも事実である。
以上の状況を総合的に勘案し、東京都は、青少年の健全育成という観点から、規制を導入すべきであろう。すなわち、青少年の保護育成、自ら成長発達する機会の保障という観点から、小学生や高校生など年齢に応じた生活行動、成長の実態に合わせた規制方法を検討することにより、青少年が正当な目的で古物を売却する権利まで制限しないよう配慮すべきである。
なお、青少年の健全な育成、非行防止の観点から、規制に偏ることなく、青少年への教育や親の意識啓発と併せた総合的な対策が必要であることは言うまでもない。
第4章 青少年が被害者となることを防ぐために
1スカウトの規制
@現状と問題点
◎「スカウト」の実態
近年、青少年が集まる新宿、渋谷、池袋等の繁華街で、精神的に未熟な青少年が、いわゆるスカウトにより、ファッションヘルス等の風俗営業に従事したり、ホストクラブに誘われ、客として出入りするようになり、さらには、その代金支払いや借金返済のためにスカウトの勧誘を受けて売春するに至る例が起きている。このような街頭でのスカウト活動は、青少年の健全育成を阻害し、風俗環境を汚染するにもかかわらず、有効な対策が採られていない実態がある。
なお、ホストクラブに客として入店させる目的で行われる勧誘については、キャッチとも称されているが、キャッチセールスとの混同を避けるためスカウトと総称した。
◎問題点
こうしたスカウトの活動に対しては、少女がスカウトの斡旋で性風俗店において実際に業務に従事していることを把握した後に、事後的に職業安定法等の現行法令を適用した事例は数例あるが、風俗営業法では18歳未満の者を風俗業務に従事させること及び客とすることは禁じているが、従事させ、客とするために勧誘すること自体は禁じていないため、同法を適用して事前に取り締まることはできない。
また、少女と話している大人が、風俗店がらみのスカウト行為をしているのか、単なる立ち話やデートの誘いに過ぎないのか、あるいは、一般のアルバイトの勧誘や物品・サービスの販売なのかを、外見的な態様から判断することは難しいことに加え、少女の側もスカウトの勧誘行為を迷惑や不安と感じていない状況があるため、実効性ある規制が困難になっている。
A提言
少女が、スカウトの勧誘行為により、性風俗店において業務に従事したり、ホストクラブ等に出入りすることを未然に防止することが必要なことは、言うまでもない。
しかし、スカウトの勧誘行為と他の行為を区別することは困難であり、新たな条例で違法なスカウトの勧誘を明確に定めて規制することは、現在のところ、難しい。
このため、都として、実効性ある規制方法を検討するとともに、当面は、現行法令を可能な限り活用する道を探りつつ、青少年への教育・啓発を進めて、被害の防止に努めることが求められる。
2 生セラ等の買受け等の規制
@現状と問題点
◎「生セラ」の現状
近年、大人が少女が身につけている下着等を買い取る、いわゆる「生セラ」と呼ばれる行為が行われるようになり、それが高じて、少女の糞尿の売買も行われている。また、これを業として行う者もある、との報告がなされている。具体的には、大人が路上等において少女に声を掛け、公衆トイレ等において説いだ下着を直接購入する形態のほか、都内で2店舗のみではあるが、店舗内において少女が着用している下着を脱ぎ、客に直接販売する形態があり、少女の中には、容易に小遣いが入手できることから安易に生セラを行う者がおり、更なる遊ぶ金ほしさに風俗等に身を投じていく例もある、とのことである。
このような、大人の性的嗜癖を満たす手段のために青少年の健全育成が阻害されることがあってはならない。
◎問題点
営業者については、古物営業法の無許可営業違反で摘発した例があるが、現在は許可を取得しているうえ、古物営業法を適用できない売買形式へ移行しているため、開法では取り締まれない。また、大人が業者を介さず直接に少女から街頭で買い取る形式の生セラについても、現行法令上何らの取り締りもできない状況にある。
A提言
生セラを規制する法令がない上、規制対象とする物品や行為を明確に定めることは困難であるため、現在のところ、生セラを罰則を設けて禁止することは難しい。
しかし、少女が、使用済み下着などを高額で売り、容易に大金を手に入れることが好ましくないことは、言うまでもない。
よって、都健全育成条例で生セラ禁止規定を設け、禁止されるべき行為であるという認識を宣言すべきである。
第5章 対策の実効性を確保するために
1 深夜立入制限施設等への調査指導体制の充実
@都内における指導対象施設等の現状
都内には、青少年の深夜立入を制限している施設が、興行場、ボーリング場など95箇所(平成15年9月30日現在)ある。また、24時間稼動のため、深夜の調査を要する図書類等の自動販売機が1,116台ある。
A都の対応状況と問題点
東京都では、10名の知事部局職員で指導、調査を行っており、平成14年度の立入調査実績は、深夜立入制限施設が35件、自動販売機が685件であった。主な指導内容は、深夜立入制限の実施状況と制限表示の調査、自動販売機等の届出表示や収納物の調査である。
深夜立入制限施設は、今後、カラオケボックスと漫画喫茶・インターネットカフェが追加されると、現在の95箇所から約1,600箇所に激増する。また、今後、図書類の自動販売機等に年齢識別装置等の設置と稼動が義務付けられた場合に、365日、24時間無人販売している自動販売機の特質を考慮すると、現在の調査体制では、十分な稼動状況調査は困難である。
B他道府県の対応状況
知事部局の職員に立入調査権を付与することが基本(46都道府県)であるが、35道府県において、警察官又は警察職員にも付与している。
C提言
◎調査指導体制整備の考え方
規制の効果を十分に発揮するには、立入調査による十分な指導が欠かせないが、今後、調査対象施設等の増加が見込まれることから、現在の知事部局職員のみの体制では、困難がある。
◎警察官への立入調査権付与
深夜立入制限施設及び図書類等の自動販売機の調査については、必要な範囲の警察官に立入調査権を付与することが適当である。また、指定刃物ならびに古物買受け等にかかる調査については、銃砲刀剣類取締法や古物営業法、質屋営業法にかかる知識を要すること、対象店舗が都内全域に散在することなどから、警察官による立入調査を中心とすることが適当である。
なお、警察官に都健全育成条例に基づく立入調査権を付与する場合は、その権限を犯罪捜査のために用いてはならない旨、条例に明記することが必要である。
2 書店、コンビ二等への調査指導体制の充実
@都内における指導対象施設等の現状
都内には、不健全図書類に関する指導を要する書店、コンビニ、ビデオレンタル・
セル店等が約11,300店ある。
A都の対応状況と問題点
東京都では、10名の知事部局職員で指導、調査を行っており、平成14年度の実績は、2,750件であった。主な指導内容は、不健全図書類の区分陳列等の指導である。
しかし、現在の体制では、全ての書店、コンビニ等への立入調査が一巡するのに約5年を要することとなり、十分な指導は極めて困難になっている。ちなみに、平成14年度に区分陳列等に違反した店舗のうち、再調査を要するとされた店舗は141あったが、実際に年度内に再調査できたのは29店舗であった。
B他道府県の対応状況
立入調査は、環境浄化キャンペーンなど行事と併せて実施することが多く、回数は年1回〜2回程度である。
C提言
◎地域の力の活用
どのような指定方式を採用したとしても、不健全図書の規制の実効性を担保する鍵を握るのは、実際に区分陳列を行う販売店員の意識であるが、都内に1万店を超える書店、コンビニの多忙な販売員に、日々、多種、多量に発行される図書の区分陳列について、日常的に意識づけするには、行政職員による指導のみでは限界があることから、地域住民による働きかけも望まれるところである。
そこで、地域住民の有害環境を改善する意欲を活かす仕組みづくりが望まれる。
3 緊急な指定への対応
@緊急指定制度とその問題点
緊急に不健全図書等を指定する必要がある場合に対応する制度として、東京、長野、鳥取以外の44道府県においては、審議会への諮問や第三者の意見聴取を経ずに、行政のみの判断で不健全図書等を個別指定し、事後に審議会に報告する、「緊急指定制度」が採用されている。
緊急指定制度は、迅速に指定できるという長所を持つ反面、事後に審議会に報告を行うにせよ行政職員のみで行うため、有識者で構成する審議会や審議会小委員会による指定に比較し公平・適正な指定手続きという点で劣るという短所も持つが、審議会の開催間隔が長い場合に、その間を補う上で、長所と欠点を比較考量して採用される制度と言えよう。
A小委員会制度とその問題点
東京都は、審議会を毎月開催しているが、緊急性など特別の必要性がある場合は、審議会の中に小委員会を設置し、そこで指定に係る審議を行うこととしている。小委員会制度は、指定の公平性と迅速性の両立を図る優れた制度であるが、現在は常設されていないため、緊急の必要性に対応できていない。
B提言
小委員会を常設機関とし、月に1回の審議会開催を待つことなく緊急に指定すべき不健全図書や危険な刃物の指定に対し、公平・適正かつ迅速に対応する体制を確保されたい。
4 規定の整備
@買春等処罰規定の整備
◎都健全育成条例と児童買春等禁止法(以下、「法」という。)の異同等都は、平成9年に都健全育成条例を改正し、青少年に対する買春等を禁止し、これに違反した大人に罰則を科す規定を新設した。その後、平成11年に、国において児童買春等禁止法が施行された。
都健全育成条例では、「金品等を対償として供与等して青少年と性交又は性交類似行為を行うこと」と「(全品等を対償とせずに、)周旋を受けて、青少年と性交又は性交類似行為を行うこと」のいずれをも、禁止している。これに対し、法では、対償を供与等して児童に対して性交等を行うことのみを「児童買春と」定義して禁止し、対償を供与等しない場合の禁止規定はない。
また、法の罰則は「3年以下の懲役又は100万円以下の罰金」であるが、都健全育成条例の罰則は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされている。さらに、法では児童買春した者は少年であっても14歳以上であれば罰則が科せられるが、都健全育成条例では青少年の違反行為は免責されているという相違がある。
◎都健全育成条例と法の相違により生ずる問題点
金品等を対償とする場合は、法と都健全育成条例の規定は重複するが、全品等を対償としない場合は都健全育成条例のみが禁止しているため、金品等を対償とするか否かによって、罰則の軽重が異なることになる。
また、14歳以上18歳未満の青少年は、金品等を対償として買春した場合は、法で罰せられるが、金品等を対償としないで買春した場合は、法でも都健全育成条例でも罰せられない。
◎提言
都健全育成条例の罰則を法及び他道府県の類似条例ならびに都の他の条例との均衡の視点から見直されたい。
青少年の条例違反行為を免責する理由は、青少年の福祉を阻害するおそれのある行為を防止する義務を大人に負わせることにあるという本条例の本旨に基づく。
しかし、買春は、行為者が18歳未満であっても、青少年の福祉を阻害する。
また、青少年と違法な性交又は性交類似行為を行った場合に、金品等を対償とする場合は青少年であっても罰せられるが、金品等を対償としない場合は青少年であれば罰せられないというのは、行為と罰の均衡を欠く而もあるとの意見も出された。
よって、買春行為に関しては、都健全育成条例の青少年免責規定の趣旨を吟味しつつ、その適用の是非を改めて検討されたい。
なお、法と重複する規定については、所要の措置をされたい。
おわりに
本協議会は、都知事からの諮問を受け、条例による関与が都民に一定の不利益を伴うという事実も十分に考慮した上で、青少年が健全に育つ環境づくりに都民一人一人が責任を負うという自覚に立ち、より良い条例とするよう審議を重ねた。
緊急の課題に対して早急に結論を出すべく精力的に検討を進めてきたところである。その間、不健全図書類の販売や深夜の青少年の立ち入りに関する自主規制への取組状況について、関係業界団体から意見を聴取してきた。また、毎月、知事の諮問に応じ不健全図書類の調査・審議に当たっている東京都青少年健全育成審議会会長から、他の委員の様々な見解も含めて、大変貴重な意見を頂いた。ご協力を頂いた方々に厚く感謝の意を表したい。
一方、多くの委員から、インターネット上における有害情報の氾濫から青少年を保護することは、21世紀における青少年健全育成の重要課題であるとの指摘がなされ、協議会委員全員の認識の一致を見た。しかし、国境を越える情報の受発信やサイトの広がりについて、自治体としてどのような方策が可能か、極めて難しい分野であり、国の動向等にも留意しつつ今後の課題とすることとした。
子どもはみな、健全に成長する力をもっている。本来もっているその力を強めるために、あるいはそれを阻むものから子どもを守るために、環境を整備し、非行防止のための効果的な対策を実施することは、われわれ大人の務めである。そして、子ども達は、このような大人社会の真摯な働きかけを理解し、受け入れる力があると確信している。
この答申に盛り込まれた提言が、東京の未来を担う青少年の健全育成に活かされるよう、東京都が、速やかにかつ着実に実施に移されることを期待する。また、広範な都民、区市町村等の理解と協力、とりわけ、関係業界による自主規制への誠実な取り組みを強く要望するものである。
平成16年1月19日 東京都青少年問題協議会
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