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平成15年10月
〜 緊急提言〜
子どもを犯罪に巻き込まないための方策
子どもを犯罪に巻き込まないための方策を提言する会
座長 前田雅英
目次
はじめに1頁
1. 子どもを犯罪に巻き込まないために
1−(1)子どもに対する非行・犯罪の被害防止教育の強化等 4頁
1−(2)子どものコミュニケーション能力と規範意識を高める対策の強化 8頁
1−(3)虐待を受けている子ども等への対応 13頁
2. 問題を抱えた子どもの立ち直りに向けた対策
2−(1)非行の初期的段階における子どもへの対策 16頁
2−(2)犯罪少年に対する早期の対策 19頁
2−(3)立ち直りのサポート活動の抜本的強化 25頁
3. 学校の役割とその重要性 28頁
4. 子どもの健全育成のための大人社会の真剣な取組
4−(1)盛り場での犯罪に子どもを巻き込まないための対策 32頁
4−(2)有害情報や有害環境等から子どもを守るための対策 35頁
おわりに 37頁
はじめに
私たちは、治安対策を進める東京都から、少年犯罪の予防方策について、それぞれの経験や研究を基に意見を述べるとともに、相互に議論し、提言することを求められた。
東京都が指摘するように、悪化する現下の治安の要因の一つとして、少年による犯罪の多発や凶悪化が挙げられよう。その状況は、最近のいくつかの事件にも現れているように、私たちのこれまでの想像を越えたもので、もはや一刻の猶予も許さない段階にある。
もちろん、誰しもがすべての子どもの幸せを希求しており、大多数の子どもたちは健やかに育っているのだが、非行少年や犯罪の被害者になる子どもたちが多数生じている事実に、私たちは、治安の確保の問題としても、個々の子どもの問題としても、社会全体がこれまで以上に危機意識を持って、真剣に向き合わなければならないと考える。
私たちは、子どもを取り巻く社会的な状況がますます悪化しているとの各方面の指摘に同意する。子どもにとって有害な情報や危険な情報があふれ、夜型社会が進み、家庭や地域の子育ての力が低下するなど、子どもを非行や犯罪に誘う要因が以前と比べ格段に広がっている。子どもの状況を見れば、親を含む大人や同世代の子ども同士の間で心を通わせることが不得意で、他者の痛みを理解できない子どもや、悪意や危険を察知する力に欠けている子ども、やってはいけないことを軽く考えている子ども等が増えている。このような状況を考えると、私たちは、今後ますます多くの子どもが犯罪に巻き込まれることを懸念せざるを得ない。
他方で、私たちを含め、子どもの問題にかかわる司法、警察、行政、医療、学校、地域、PTA等の関係者は、それぞれの立場で、それなりに努力をしてきたし、中には、献身的な取組を進めてきた多くの方々がおられることも事実である。が、そのような大人社会のこれまでの努力を、少年犯罪を防止する上で今後十分に見直しを図っていく必要があることは、先に述べた現状が示している。
確かに、犯罪に手を染め、警察等が検挙して家庭裁判所に送致される少年は、都内で年間1万5千人を超えるが、その8割以上は不処分・審判不開始となっているなど、少年が十分な反省の機会を与えられずに措置されている状況がある。このため、犯罪を犯しても大したことはない、万引きや自転車盗などを罪とも思わないなどの風潮があり、犯罪を繰り返す子どもを生み出すことにつながっている。また、問題を抱えた子どもたちのサポート活動は、非行少年の数から見ても遙かに少ないと言わざるを得ない。それに、関係者の真剣な取組も、ともすれば個別的に行われがちで、相互の連携が十分ではないため、その効果には限界がある場合もある。非行に走る子どもたちに対する対応には学校間に違いがあり、また、荒れた子どもに適切に対処できないことを懸念して公立学校に通わせることをためらう家庭も存在する。高校退学者の中で学校に充分に適応できなかった子どもたちは社会との結びつきを失い、集団非行に誘われやすい状況も見られる。子どもを犯罪に巻き込まないための教育については、一部の関係者の努力に負うのみで、組織的・計画的に、全体に行き渡るように行われているとは言い難い。地域において、子どもたちを育てる活動は、多くのボランティアなどによって行われているものの、その先進的な取組が語られることはあっても全体から見れば微々たるものと見るべきではないか。父親の役割が強調されて久しいが、我が子を犯罪の加害者や被害者にしないように、心を砕き、あるいは、非行の兆しを見つけてこれと真剣に取り組むことをしない父親が多いことは、非行少年がしばしば語るところである。また、子どもに有害な情報の氾濫は、少なくとも子どもたちをそれから遠ざけようと大人が真剣に努力していると子どもたちが思えるような状況にはない。
このような状況を見るとき、ある子どもたちにとっては、大人社会が子どもの非行を必死に押しとどめようとしていると思えないのは無理からぬことと考えざるを得ない。
そしてそのことが、全体として子どもたちの社会的規範を失わせ、罪を犯すことについての畏れを持たせることに失敗している原因となっていると考える。
1. 子どもを犯罪に巻き込まないために
1−(1)子どもに対する非行・犯罪の被害防止教育の強化等
現代の社会には、子どもが犯罪に巻き込まれやすい環境が満ちている。そのような中で、子どもが非行少年や被害者とならないため、犯罪からどのように子どもを守るのか、子どもに対して、早い時期から段階を踏んで徹底的に教育を行うべきである。
現代では、物事の善悪の判断が十分に身についていない子どもや、具体的にどのような危険が身の回りにあるのかイメージを持つことのできない子どもも増えていると言われている。そのようなことについて具体的に教え、自分に起こり得ることとしてとらえることができるための教育を再強化する必要がある。それは、例えば、既に行われてきた非行防止教育や罪と罰についての法教育があろう。他方で、被害を防止するための教育としては、総論的に言えば、正しい判断・選択を行うための力を付ける教育が必要である。
さらに、子どもを犯罪に巻き込まないためには、新しいメディアについての教育も行う必要がある。インターネットや携帯電話等の新しいメディアによって、入手できる情報量が、飛躍的に増大したのみならず、それらメディアは情報の発信もできる点で、他人とのコミュニケーションの在り方を大きく変えてきている。他方で、新しいメディアには、現実社会と仮想社会の区別がつかなくなってしまうこと、わいせつ情報や残虐性を助長する情報、様々な誘惑をもたらす情報が簡単に入手できること、全く面識のない他人と知り合うことにより犯罪に巻き込まれる機会が増えること、などの影の面があるが、特にコミュニケーション能力の未熟な子どもに対しては適切な教育が行われる必要がある。
様々な機関が広く、かつ緊密に連携して、犯罪に巻き込まれないための教育を子どもに行うために、以下の提言を行う。
◎ 非行・犯罪の被害防止教育について
○ 社会の各界の人たちが非行・犯罪の被害防止教育を
警察職員や少年センター職員だけではなく、現・元警察官、現・元検事、現・元裁判官、現・元調査官、弁護士、現・元教員、現・元PTA、現・元補導員、保護司、青少年委員、児童委員、児童福祉司、児童(青年)精神科医療関係者、犯罪被害者支援団体等が協力して非行・犯罪の被害防止教育を行う。
○ 非行・犯罪の被害防止教育の内容を総合的に考える委員会の設置を
非行・犯罪の被害防止教育でどのようなことを子どもに教えるかは重要な点であり、総合的に検討する必要がある。様々な経験を有する者、例えば、警察官、検事、裁判官、調査官、弁護士、現・元教員、現・元PTA、補導員、保護司、児童委員、児童福祉司、児童(青年)精神科医療関係者及び被害者対策の専門家等から成る委員会を設置し、多角的な検討を行うべきである。
◎ 新しいメディアに関する教育について
○ 学校だけではなく地域の有識者・企業、ボランティア団体による新しいメディアに関する教育を
新しいメディアについて学校で教育するには教員に十分な知識とマニュアルが必要であり、学校に置かれたインターネット端末のセキュリティ上の問題も指摘されている。都内にはIT関連の会社も多く、それら企業は新しいメディアについて多くの経験を有している。そこで、ボランティア団体や地元の企業と学校が
連携して、携帯電話やインターネットの使用に際して注意すべき事項を子どもに体験学習させるべきである。
1−(2)子どものコミュニケーション能力と規範意識を高める対策の強化
最近の子どもは全般的に対人関係が未発達であり、共感性やコミュニケーション能力が欠けていると言われている。また、大人や同世代の子ども同士の間で心を通わせることが不得意で他者の痛みを理解できない子ども、危険を察知する力に欠けている子どもが増えている。それは、自分の生き方のみを追求したり、子どもへの関心が薄れてしまったりして、子どもとのコミュニケーションがとれない親が増えているということも一因である。子どもが非行や反社会的な行動をしたときに、父親又は母親がその状況から逃げずに毅然として叱ることが必要であるが、現代では、そのようなことができず、親が子どもの行動にあまり関心がない、あるいは、親が子どもにおもね、その非行の原因を他に責任転嫁するなどの、いわゆる「親不在」の家庭が多くなっていると言われる。このように家庭の教育力の低下がある状況は、子どものコミュニケーション能力と規範意識を高めていく上でも問題がある。子どものコミュニケーション能力等を高めるためには、迂遠であっても、親の教育や親の子どもに対する躾・教育に外部が口を出していくことも必要である。
犯罪増加の大きな原因として地域の共同体機能や自治機能の低下もあるが、また、近所の子どもが何をしているか地域住民が無関心な状況が広まり、地域全体で子どもを健全に育てていく機能も同様に低下している。地域社会には、子どもたちに気を付ける大人や、子どもたちが楽しく過ごせる場所が減少している。学校は夕方や土日には自由に施設を利用することはできない。「居場所」を求める子どもたちは、盛り場でのたむろ集団や非行少年集団の中に、居心地の良さを見つけてしまう場合がある。子どもが自らの社会における存在意義を感じることのできる社会活動等のいわゆる「居場所」は、子どものコミュニケーションを行う力を育てるが、子どもを非行に陥らせないためにも、また、子どもの再犯防止のためにも重要である。言葉を換えれば、地域の大人たちが子どもを「かまう」機会・場所を増やしていくことが大事である。
そのような中で、従来の地縁に加えて、比較的広い地域内での有志や職場ごとのまとまりやボランティア団体等により、子どもの「居場所」を作り育てていくことが必要である。また、子どもが異なる世代と交流し、様々な経験を学ぶ場も「居場所」として重要である。家庭が「親不在」にならないように、また「親不在」となっている、
家庭を学校や地域でともに支えるために、父親又は母親が地域や学校の活動に積極的に参加し、学校で発生する問題に関わることができる仕組みを作ることも必要である。
子どものコミュニケーション能力と規範意識の向上のために、以下の提言を行う。
◎ いわゆる「親父の会」について
○ 都内の父親は「親父の会」をたくさん結成しよう
問題を抱える子どもを見ると、父親は仕事等に忙しく子どものことを知らず、子どもは父親のことを全く信用していないという父親不在の例や、父親又は母親が子どもの抱える問題に正面から向き合うことのない「親不在」の例が見られる。これは、父親の存在の有無の問題ではなく、例えば、悪いものは悪いと明言する毅然たる態度をとる、いわゆる「父性」の欠如の問題であり、もちろん母子家庭の問題ではない。そうした問題を見た地域の父親が、名称は様々であるがいわゆる「親父の会」を立ち上げ、例えば、学校の校庭でキャンプや花火やバーベキューをやったり、学校で子どもを集めてスポーツ大会をやるなどの活動を行っている例がある。そのような活動を継続的に行っていくうちに、子どもは近所の父親の顔を覚え、近所の大人と子どもが挨拶をし、気を付けあうようになり、同時に親も子どもも、問題のある子どもを皆で支えたり、地域で見知らぬ大人に注意を払うようになる。
○ 「親父の会」同士でネットワークを作ることに行政は支援を既に都内各地でそのような「親父の会」がいくつも発足しているが、それらの会がネットワークを作り、さらに発展していくように、学校や都、区市町村は、それらの会の活動を互いに紹介する場を設け、学校や児童館を活動場所として提供するなどして支援すべきである。
○ 職場ごとの「親父の会」を作り、そのネットワーク作りを
現実的には、多くの父親は地域での活動に参加できておらず、地域に知り合いがいないこともある。それならば、普段から見知っている職場の同僚で地域の「親父の会」を作り、それらのネットワークを作ることも一つの方策である。
◎ 「心の東京革命」について
○ 「心の東京革命」に基づく施策の拡充を
1−(3)虐待を受けている子ども等への対応
◎ 親権の制限の検討について
○ 親権の制限も検討を
さらに児童福祉法に基づき、親権者等の意思に反しても家庭裁判所の承認を得て子どもを児童養護施設等に入所させる措置を活用する。それとともに、虐待を行う親権者等から子どもを守るため、家庭裁判所の決定による親権者の子どもに対する居所指定権や身上監護権の一部停止制度の創設を検討する必要がある。
2−(1)非行の初期的段階における子どもへの対策
夜型社会が進んでおり、大人も深夜に外出することが不自然ではなくなってきている。そのような中で、学習塾通いのために子どもも夜遅くまで外出せざるを得ないこともあるが決して好ましいことではない。しかも、一部の少年は盛り場で、朝方まで徘徊し、24時間営業のコンビニエンスストア等の前には何をするでもなく集まり、カラオケ店や漫画喫茶で夜通し過ごすこともあるという、異常な状態が見られる。これは無断外泊であったり、事実上の家出であったりするわけであるが、携帯電話で子どもと連絡を取れるとして深刻に考えていない親もいる。子どもが深夜外出、深夜徘徊、外泊、家出等をすることにより、犯罪に巻き込まれることが増え、また、非行集団との接点が増加するなど、深夜外出等は非行行為の入り口であり、非行の初期的段階である。
子どもの深夜外出、深夜徘徊、盛り場での外泊、家出等をなくしていくために、以下の提言を行う。
◎ 子どもの深夜外出に関わる問題について
○ 子どもの深夜外出の防止を
東京、長野、大阪、鳥取以外の43道府県では青少年健全育成条例で子どもの深夜外出を制限する何らかの規定を置いている。東京都においては、例えば、子どもたちが深夜・未明に入り浸っている場所へ子どもが立ち入らないようにする方策や、深夜において子どもが外出しないように保護者等に義務づけたり、子どもを深夜に同行外出する大人に対して制限を行うなどの、何らかの方策を採るべきである。
○ 深夜のコンビニエンスストア等の店前での子どもたちのい集の防止を24時間営業しているコンビニエンスストア等は既に都市住民にとってはなくてはならないものとなっているが、一方、店やその周囲が子どものたまり場となりやすく、深夜徘徊を助長するものとなっている。既にコンビニエンスストア業界が行っている取組には、子どもが深夜にコンビニエンスストア前でたむろすることを防止することも含まれているが、都、区市町村、警察、学校も協力して、コンビニエンスストア等やその周辺で深夜に子どもがたむろしたりしないような何らかの方策を採るべきである。
◎ ぐ犯少年送致について
○ ぐ犯少年の送致の拡大を
ぐ犯少年は、補導少年と異なり、家庭裁判所に送致され、調査・譴責を受けるのであり、非行の初期的段階にある子どもに自らの行っている行為を自覚させるためには、警察、検察、家庭裁判所、児童相談所は、ぐ犯少年の積極的送致、通告について検討すべきである。
2−(2)犯罪少年に対する早期の対策
家庭裁判所の判断は尊重されるべきであるし、また、調査の過程で子どもの反省を促す措置は採られているが、現実的に見れば、罪を犯してもたいしたことはないという風潮が子どもたちの間に生まれ、いわゆる初発型非行を繰り返し、だんだん非行度の深化した罪を犯すようになっていく場合もある。罪を犯し検挙されても、もし最終的に何らの制裁も科されず反省を促すものでもなければ、かえって刑事司法システムに対する甘い見方を育て、子どもの健全育成に反するものとなってしまう。
◎ 子どもの反省を深めるための奉仕活動等について
○ 簡易送致をする少年事件について警察段階で子どもの反省を深める工夫を現在、簡易送致をする子どもについては、担当の警察官が子どもを譴責しているのがほとんどであり、個々の警察官の対応に任せられている部分が大きいが、警察段階において子どもの反省を深めるための何らかの仕組みを作ること、例えば、子どもと警察官と教員の面談の機会を設ける枠組みとか、警察が、子どもや保護者に社会奉仕活動を行うボランティア団体を紹介し、子どもが社会参加活動を行った場合には、その旨を簡易送致書に記載することなどが考えられよう。
○ 万引きされた本を買い取る店に対する何らかの対策も
書店では万引き被害が拡大し、経営を脅かされているところもあると言われている。万引きの実態を見ると、専門書やコミック本のセットがひと揃いで万引きされるなど、その後に高く買い取ってもらうことを狙っているものがあると思われる。いわゆる新古書店では、本を持ち込んできた者の年齢確認を行ったり、明らかに万引きされたと分かる本は買い取らないなどの対策を採っているところもあるが、そのような対応をしていないところもあり、本を買い取る店に対する何らかの対策も検討すべきである。
4−(1)盛り場での犯罪に子どもを巻き込まないための対策
子どもの深夜徘徊の問題とも関連するが、渋谷、新宿、池袋等の盛り場には中高生がたむろしている。マスメディアの影響により、盛り場には、首都圏全域や、日本全国から子どもたちが集まってきており、家出をしたまま何日も盛り場で過ごす子どももいる。盛り場に来れば何か楽しくなれる新しいもの、流行しているものが手に入ると思うために来るのであるが、中には、自分や自分の持ち物を売り物にして金を稼ぐために来る子どもたちもいる。そして、子どもを食い物にしようとする大人もまた盛り場に集まり、子どもたちは無自覚なまま大人たちに利用されていることも少なくない。
また、子どもたちは盛り場で薬物などの犯罪にも手を染めることもある。
他方で、これまで個別の機関が何らかの取組を行ったが、「盛り場対策」という観点での、各機関の連携は弱かった。そして、盛り場に子どもが集まることは法律に触れず、踏み込んだ取組ができなかった上に、マスメディアは子どもを煽るような報道をしてきた。また、地元地域も子どもによる経済効果もあり、思い切った取組には及び腰であった。
渋谷、新宿、池袋等の盛り場は、マスメディアによって、子どもの無法地帯のように喧伝されており、この盛り場への対策を行うことは象徴的な意味を持つ。盛り場での非行行為を行ったり、犯罪に巻き込まれたりするのは、他地域から流入してくる子どもが多く、それら子どもたちの居住する地元地域での取組も必要である。さらに盛り場対策に的を絞った以下の提言を行う。
○ 使用済み下着、唾液、尿等の販売等の行為の規制を
使用済みの下着や唾液、尿等を販売する店が渋谷等の盛り場にあり、少女は簡単に大金を手にすることができる。下着や唾液、尿が商品になるということ自体モラルの低下、それを買う大人が存在する社会の質の低さを示すものであるが、子どもたちはそれで得た金で深夜徘徊を行い、又は盛り場に来て欲しいものを手に入れる。そのような行為の悪循環の中で子どもたちが犯罪に巻き込まれる危険性が高まっていく。
子どもが犯罪に巻き込まれる危険性を減らすとともに、恥ずべきほど質の低い大人社会を改善する契機とするために、子どもたちの下着や唾液、尿等が商品とならないような何らかの方策を採る必要がある。そのようなものを売る、子どもを犯罪に巻き込む可能性のある種類の店舗について、まちづくりの観点から立地規制を行うことも一つの方法である。
○ 様々なボランティア団体等による盛り場パトロールの強化を
既にガーディアン・エンジェルス等のボランティア団体は盛り場において、喫煙や落書きをしている子どもや、子どもを誘っている大人や、不正薬物取引を行っている不良外国人に声をかけたり、必要に応じて警察に通報しており、犯罪抑制に効果を上げている。
ただ、盛り場での犯罪の予防や犯罪に巻き込まれるきっかけとなる行為の防止のために重要なのは、市民の姿を見せることであり、ボランティア団体や地域住民は連携して盛り場のパトロールを強化する必要がある。
○ 行政はボランティア団体への支援を
盛り場パトロールを行っているボランティア団体の活動について、都や区市町村は、例えば、それら団体の活動を住民に広く紹介し、必要な活動実費について援助し、寄付を募るなどして、団体を支援する必要がある。
○ より多くの防犯カメラの設置を
盛り場に設置された防犯カメラが街頭犯罪を予防することに効果があることは明らかである。区市町村や地域は、防犯カメラの設置を積極的に推進し、その適切な運用を図りながら、情報を活用すべきである。
4−(2)有害情報や有害環境等から子どもを守るための対策
現代社会には少年にとって有害な情報や危険な環境があふれ、特に性的な情報が氾濫している。青少年健全育成条例等の法令により規制はあるが、実効性が乏しい。このような情報や環境が子どもの健全な成長に有害であることは疑いはないが、大人の側の取組は十分ではなかった。その一因として、子どもにとって有害な情報であっても大人相手には、それを販売・提供等することが許されるという事情もあった。結局、ある程度の形を整えても、それが形骸化していくという繰り返しで現状に到ったのではないか。
子どもは、大人のように、世の中に氾濫している有害な情報をうまく処理したり有害な環境を避けたりすることができないし、かえってそれをモデルとして学習してしまう傾向がある。周りから入ってくる情報や子どもを取り巻く環境を大人がコントロールすることが必要であり、以下の提言を行う。
○ 有害図書の子どもへの販売の防止を
性的感情を刺激したり、残虐性を助長する雑誌の不健全図書類指定については、大多数の道府県で包括指定緊急指定制度を導入しているが、東京都では現在、個別に指定されている。しかし、毎月1回の指定で、約10冊しか指定されず、また、指定された時点では、店頭には並んでおらず、実効性は低い。指定図書でもなく、出版業界が自主規制で成人用であるとしている雑誌でなくても、子どもの健全育成に有害であると思われる雑誌が何らの制限もなく、書店やコンビニエンスストア等で売られ、小中学生の目に触れることができるなど、憂慮にたえない状態である。
有害指定でなくても子どもの健全育成上、有害な図書・ビデオ・コンピュータソフト等が書店、コンビニエンスストア、自動販売機等を通じて子どもの手に入らないようにするための何らかの方策を採ることが必要である。
特に自動販売機については、青少年が有害な図書やビデオを容易に入手できるため、年齢識別機の設置を義務付ける必要がある。また、自動販売機の設置場所を規制すべきとの意見もあった。
おわりに
私たちは、子どもを取り巻く社会的な状況がますます悪化し、多くの子どもたちが日々犯罪に巻き込まれていく中で、緊急に必要な対策を採ることを関係者に求めるために、以上の提言を行った。もとより、早急に提言を行うという目的から、平成15年8月21日、9月5日、9月30日の3回の議論のみで作成した提言であり、すべての方策を網羅的に取り上げたものではない。ただ、これまで少年による非行を防止するために様々の提言が既に行われながら、それがなかなか実現されてはこなかったという現状を見て、ここでは、関係者が直ちに行動に移すことができるように、できる限り具体的な提を行った。
子どもの問題にかかわる者が、それぞれの立場で、それなりに努力をしてきたが、その取組が問題を抱える子どもの数に比べ遙かに少ないこと、その取組が、ともすれば個別的に行われがちで、相互の連携が十分ではないことは、指摘したとおりである。
ここでは、子どもに対する非行・犯罪の被害防止教育、子どもの「居場所」作り、虐待等を受けている子どもへの対応、問題を抱えた子どもの立ち直り支援、学校を中心とした取組、子どもに悪影響を与える有害な情報や盛り場等における子どもに有害な環境への対策等について提言を行った。確かに、提言を実行に移すためには、財政上の措置が必要なものもあろうし、青少年健全育成条例等の条例や関係規程の改正が必要なものもあるであろう。また、より実効性ある条例とするために、他道府県のような警察官への立入調査権付与や、罰則の強化についても検討すべきであろう。種々の困難はあろうが、都や区市町村は、強い意志を持って、必要な措置を直ちに行うべきである。
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