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警察庁/出会い系サイトの定義解釈についての意見質問
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2003.7.24

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警察庁が募集していた出会い系サイトの定義解釈について、以下の「質問」を電子メールにて送りましたので、ここに公開します。

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Subject: 出会い系サイトの定義についての意見質問
From:ki@tree.odn.ne.jp

警察庁
生活安全局少年課 御中
出会い系サイトの定義についての質問担当者様

インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律における「インターネット異性紹介事業」の定義についての意見及び警察庁の見解についての“質問”

2003年7月24日 氏名: 北野 桂 カウンター管理統制掲示板運営人
メールアドレス: ki@tree.odn.ne.jp

 「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(平成15年法律第83号)における「インターネット異性紹介事業」の定義について、下記の通り意見を申し述べると共に、下記意見についての警察庁の見解を“質問”し、回答を求めます。

 “質問”への回答は、包括的にではなく、個別の意見に対して、個別に質問するものとし、個別の回答を求めます。“質問”は全部で24項目です。  

             意見及び質問

 警察庁の「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(平成15年法律第83号)における「インターネット異性紹介事業」の定義解釈(以下「警察庁解釈」という)については、下記の理由によりすべて反対であり、同意できない。

 従って、「警察庁解釈」についてはこれをすべて撤回した上で、下記で示される代替案を準用していただきたい。

1 「異性交際(面識のない異性との交際をいう。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ」について

質問1 青少年の利用を想定したサイト開設者が「面識がある人だけ」を対象に投稿を制限していても、面識が無い人が面識があるフリをして投稿する場合は、サイト開設者は対処しようが無いのではないか? そのような処罰は理不尽なのではないか?

面識が無いフリをしている投稿と真に面識が無い投稿とを峻別する表現の基準を具体的に示していただきたい。

 「警察庁解釈」によると、「面識のない」とは、「インターネット異性紹介事業をきっかけとして知り合うまで、お互いに全く関係のなかった、見ず知らずの関係であること」としている。

 しかし、この定義では、「インターネット異性紹介事業」であると疑われているサイト管理者(以下「被疑者」という)が「被疑者」が管理する当該サイト(以下「管理サイト」という)を利用する利用者が「お互いに全く関係のなかった、見ず知らずの関係」であるか否かを当該「管理サイト」を事前に探知し、その事実を検証することは物理的・経済的・法的に困難である。

 したがって、「警察庁解釈」は、「被疑者」が「管理サイト」において「お互いに全く関係のなかった、見ず知らずの関係」を持っていない者だけを対象にサービスを提供することは不可能である。

 「被疑者」にとって知り得ない事実を証拠として犯罪が構成されるとすれば、それは近代刑法が求める罪刑法定主義の理念に反するから、こうした制度解釈執行は憲法31条違反であり、許され得ない。

 したがって、「警察庁解釈」は法的に不当であるから、当該「警察庁解釈」を撤回した上で、以下の定義解釈代案を採用されたい。

  「「異性交際(面識のない異性との交際をいう。)を希望する者」とは「面識のない」とは、「インターネット異性紹介事業」をきっかけとして知り合うまで、お互いに全く関係のなかった、見ず知らずの関係であることを、当該サイトの利用前に、サイト管理者に自己申告し、サイト管理者がその申告が事実であることを確認している状態」を言います。 」
質問2 青少年の利用を想定したサイト開設者が「性的な感情に基づかない交際」を対象に投稿を制限していても、「性的な感情に基づかない交際」をしているフリをして投稿する場合は、サイト開設者は対処しようが無いのではないか? そのような処罰は理不尽なのではないか?

「性的な感情に基づかない交際」をしているフリをした投稿と真に「性的な感情に基づかない交際」とを峻別する表現の基準を具体的に示していただきたい。

質問3 青少年の利用を想定したサイト開設者が「性的な感情に基づかない交際」を対象に投稿を制限していても、「性的な感情に基づかない交際」ではじめた交際がサイト解説者の知らぬうちに「性的な感情」に発展する場合は、サイト開設者は対処しようが無いのではないか? そのような処罰は理不尽なのではないか? 

「将来の異性交際希望者に発展する表現」とそうではない表現を峻別する判断基準を具体的に示していただきたい。

 「警察庁解釈」によると、「異性との交際」とは、「男女の性に着目した交際、すなわち相手が男であること又は女であることへの関心が重要な要素となっている感情(性的な感情)に基づく交際のことを言い、性交等を目的とする交際に限られ」ないとしている。

 しかし、「被疑者」に限らず誰であっても人の心の中を読む能力は無いのであるから、「管理サイト」を利用する利用者が「相手が男であること又は女であることへの関心が重要な要素となっている感情(性的な感情)」を持っているという事実を、利用前に探知することは不可能である。仮にウソ発見器の使用や心理学的検証を行ったとしても、心の中の「性的な感情」の有無を「被疑者」が事前に客観的に検証することは困難である。

 また、心は変化するものであるから、「相手が男であること又は女であることへの関心が重要な要素となっている感情(性的な感情)」を持っていないと判断していても、その後に「相手が男であること又は女であることへの関心が重要な要素となっている感情(性的な感情)」を抱くことは多いにあり得るが、そのような心の変化を事前に「被疑者」が探知することは不可能である。

 したがって、当該「警察庁解釈」は、「被疑者」が「管理サイト」において、「相手が男であること又は女であることへの関心が重要な要素となっている感情(性的な感情)」を持っていない者だけを対象にサービスを提供することは物理的に不可能であり、近代刑法において求められる罪刑法定主義の理念に反する刑事法制が布かれることになるから、当該解釈に基づく制度解釈執行は憲法31条違反であり、到底許され得ない。

 よって「警察庁解釈」は不当であるから、当該「警察庁解釈」を撤回した上で、以下の定義解釈代案を採用されたい。

  「「異性との交際」とは、男女の性交のことであって、かつ、当該サイトの利用前に「男女の性交を目的としている」旨をサイト管理者に通告し、サイト管理者がその通告が事実であることを確認している状態を言い、性交目的ではない交際や性交目的である事実を確認できない交際を含みません。」

 結局、「異性交際希望者」とは、お互いに全く関係のない見ず知らずの関係の者同士が性交目的で交際することを、当該サイトの利用前に、サイト管理者に通告した者を指し、且つ、その通告が事実であることをサイト管理者によって確認された状態の者のことを指すべきである。

 尚、いわゆる趣味サイトであって、「異性交際」を目的としないものは、上記代案では当然解釈として「インターネット異性紹介事業」に該当しないと考える。

 質問4 青少年の利用を想定したサイト開設者が「異性交際希望者」以外の者を対象に投稿を制限していても、「異性交際希望者」ではないフリをして掲示板等に投稿する場合は、サイト開設者は対処しようが無いのではないか? そのような処罰は理不尽なのではないか?

異性交際希望者ではないフリをしている表現と真に異性交際希望者ではない表現を峻別する基準を具体的に示していただきたい。

 「警察庁解釈」によると、「求めに応じ」とは、「サイト開設者がサイトの運営方針として、異性交際希望者を対象としてサービスを提供しているということ」を意味すると解釈している。 しかし、この定義では、前述のように「異性交際希望者」が誰であるかを事前に「被疑者」は特定し得ない。

 また、この定義では、「サービスを提供しているということ」が「求めに応じ」ることであると解釈されているが、サービスの提供といっても解釈が広く、たとえば災害時にお互いの連絡先を教えあう目的で設置される緊急時連絡掲示板のようなサービスも「サービスの提供」である。

 このような出会い系サイトではない掲示板を、クライアントが不特定異性との性交目的で、「被疑者」の想定し得ないかたちで逸脱した「活用」がなされるケースは、かつてのテレクラやポケットベルなどのパーソナルコミュニティがそうであったように、十分に考えられる。

 だが、「被疑者」の健全な「管理サイト」において、「被疑者」が想定しない目的活用が行われることまで事前に想定し、理解し、想定外利用を事前に排除することは、その設置目的から考えて困難である。

 「被疑者」の想定を超えた逸脱利用ケースまで含めて被疑者を犯罪者として処罰することがあるとすれば、まったく理不尽な処罰と言わざるを得ず、罪刑法定主義に反した処罰が行われるだけではなく、国家国民のインターネットの利用前提それ自体が壊滅し、強いてはIT国家の建設という国家目標それ自体が瓦解する虞さえあり得る。

 したがって、「警察庁解釈」は極めて不当であるから、当該「警察庁解釈」を撤回した上で、以下の定義解釈代案を採用されたい。

  「「求めに応じ」とは、「サイト開設者がサイトの運営方針として異性交際希望者の希望に応じることを明示し、且つ、異性交際希望者を対象としてサービスを提供しているということです。異性交際希望者を対象としてサービスが提供され異性交際希望者の希望を満たしている事実が継続している場合であっても、サイト開設者がサイトの運営方針として「異性交際希望者の希望を満たすことが目的ではない」ということが明示されているとは認められない場合には、「求めに応じ」たことにはなりません。

  したがって、サイトのタイトルに「出会い系」や「セックスフレンド募集掲示板」等の文字が存在しない場合、性別を表示システムが存在しない場合、趣味サイト等を標榜している場合などは、利用実態がどのようなものであれ「求めに応じ」ていないと判断されます。」

2 「その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達」する「役務」について

質問5  青少年の健全な利用を想定したサイト開設者が「不特定多数の異性の注目を集めるため記載」を制限すると、健全な投稿を削除しなければならなくなるのではないか? 不特定多数の異性の注目を集めない記載とは、具体的にどのような記載か? 

「異性の注目」を集め得る表現と「異性の注目」を集め得ない基準表現とを峻別する基準を具体的に示していただきたい。

 「警察庁解釈」によると、「その異性交際に関する情報」とは「異性交際希望者」が不特定多数の異性の注目を集めるため記載する、自己又は他の異性交際希望者に関する情報、交際を希望する相手の条件に関する情報、交際の方法に関する情報等であると解釈している。

 しかし、「異性の注目を集めるため」という内心の動機は、外部の者には伺い知る事が出来ない多様な心の感情である。

 現実問題として、掲載されている情報が「不特定多数の異性の注目を集めるため記載」されているのだという内心の動機を「被疑者」が判別し、調査し、客観的に検証することは物理的に困難である。

 そもそも、客観的・科学的に証明可能な「異性にモテるための行為基準や方法」というものは存在しない。異性の好意条件や性交条件の基準は、個人が多様であるように、多様であり、明確な基準は無い。

 また、「異性にモテたい」「性的、肉体的に合一したい」という感情や欲求は、すべての人間が持っている本能的な、あるいは自然な精神状態であり、感情を持っている当人でさえ制御困難なものである。そのような感情を持っていない人間がいるとしたら、その者こそ人間として医学的に疾患がある状態だということは、医学的な疾病定義からも明かであるから、健康な者が処罰され、不健康な者が処罰されないという異常な社会がつくられ得る。

 したがって、「警察庁解釈」のように感情を理由に、処罰されたりされなかったりするとすれば、誰もが処罰の対象となり得るから、罪刑法定主義が求める規範性・特定性を満たし得ず、不適法と言わねばならない。

 さらに、「異性の注目」についての理解や方法は、人によって多種多様である。

 車に乗ることが「異性の注目」を集めると考えてドライブに誘ったり、化粧をすることが「異性の注目」と考えて「メイクに自信があります。ほめてくれませんか」と誘ったり、社会的な地位や名誉が「異性の注目」と考えて「当方絶対安全な警察官僚です。あなたの心を逮捕させてください」と誘ったり、あるいはそれ以 外の要素が「異性の注目」であり得るし、同時に、「異性の注目」にならない場合もある。

 たとえば、ドライブに誘っている場合、単に車が好きなだけの人が自分の車を自慢するために誘っているのか、車が好きな異性とセックスするために誘っているのかは、内心の感情の問題なのであるから、外部の「被疑者」には理解できないし、客観的事実として「被疑者」が実態を検証することはできない。

 ドライブに誘っている場合でも単純に「車が好きな異性とセックスするために誘っている」とだけ考えることはできず、そのような解釈は最小化措置の観点からすべきではない。

 したがって、「その異性交際に関する情報」についての「警察庁解釈」は不当であるから、当該「警察庁解釈」を撤回した上で、以下の定義解釈代案を採用されたい。

  「「その異性交際に関する情報」とは「異性交際希望者」が不特定多数の異性の注目を集めるため記載する、自己又は他の異性交際希望者に関する情報、交際を希望する相手の条件に関する情報、交際の方法に関する情報等であり、かつそのような情報であることをサイト解説者に自己申告し、サイト解説者がその自己申告が事実であることを理解している情報」と解釈されます。

  したがって、たとえば「一緒に食事をしましょう」などと異性に注目されるかたちでセックスを誘っているように見える記載であっても、その記載が「異性に注目されセックスするためのものである」ことをサイト解説者に事前に自己申告し、サイト開設者がその通告を知り当該記載が「異性に注目されセックスするためのものである」ている場合にのみ、記載は「その異性交際に関する情報」と判断されます。美食趣味サークルの活動などで「一緒に食事をしましょう」と誘うことなどは、「その異性交際に関する情報」とは判断されません。

  また、記載の内心の目的が「異性に注目されセックスするためのもの」であったとしても、その目的をサイト解説者に申告していない場合や、申告していても客観的な状況から「異性に注目されセックスするためのもの」とサイト解説者が合理的に判断できる場合には、「その異性交際に関する情報」とは判断  されません。たとえば、「一緒に高級なお酒を飲みましょう」と誘うことは、未成年者の飲酒が法で禁じられていることから青少年の異性が対象であるとは考えられないですから、「異性に注目されセックスするためのもの」という自己申告がある場合でも、「その異性交際に関する情報」とは判断されません。

 質問6 「多数」とは何人以上が「多数」なのか?

 質問7 「不特定」を対象にした掲示板と「特定」した掲示板とを峻別する基準とは、具体的に何か?

 質問8 真に青少年以外の者による投稿と青少年のフリをした者による投稿とを峻別する基準とは具体的に何か示していただきたい。

 質問9 特定の二名のみクローズドな仮想空間で会話をする、いわゆるツーショットチャットは「インターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達」する「役務」に該当するのか?

 質問10 多数のクライアントがゲーム空間を享有しつつ、特定少数のゲーム参加者がオープンまたはクローズドな仮想空間で会話をする、いわゆるネットゲームにおけるダイレクトチャットは「インターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達」する「役務」に該当するのか?

 質問11 「インターネット上」とは具体的に何か?

 質問12 LANは「インターネット上」に含まれるのか?

 質問13 IP電話は「インターネット上」に含まれるのか?

 質問14 ケーブルテレビ等のネットワークは「インターネット上」に含まれるのか?

 質問15 いわゆる全二重パリティ無しのパソコン通信は「インターネット上」に含まれるのか?

 質問16 インターネットとオンラインで接続されているパソコン通信ネットワークは「インターネット上」に含まれるのか? また、物理的に接続されていてもオフライ ンになっている場合は「インターネット上」に含まれるのか?

 質問17 FAXネットワークは「インターネット上」に含まれるのか?

 質問18 電子掲示板ではなく、街角に不特定多数が利用できる伝言板を設置して、その伝言板をカメラで常時撮影してインターネット上でリアルタイムに映像放送する場合は「インターネット上」に含まれるのか?

 質問19 インターネットとそうではないネットワークとを峻別する基準を具体的に示していただきたい。

 「警察庁解釈」によると、「インターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達」する「役務」とは、インターネット上の電子掲示板に異性交際希望者の異性交際に関する情報を掲載し、不特定又は多数の者がインターネットを利用して閲覧できるようにするサービスであると解釈している。

 しかし、電子掲示板は単に情報共有の技術の一形態にすぎず、不特定又は多数の者が閲覧できるかどうかを決定するのは掲示板開設者だけとは限らない。

 ある種の掲示板システムでは、不特定又は多数の者が利用するか否かはクライアントの任意の意思で決定され、設置者によっては決定されないシステムの電子掲示板が存在する。

 また、クライアント側(投稿者)の任意の意思で、特定または一定のクライアント(投稿者)に対してのみ情報を開示できるシステムの電子掲示板も存在する。

 さらに、このような掲示板では、流通している情報が、「不特定又は多数の者」が閲覧できる状態になっているかどうかも開設者は把握できないシステムも存在する。

 もし、上記のようなシステムにおいて、「不特定又は多数」の投稿を削除しなければならないとしたら、特定少数の者だけが閲覧できる状態で投稿しているクライアントの投稿も削除しなければならず、サービスが自体が成立しなくなる。

 たとえば、すべてのクライアントに年齢の申告を求め、18歳未満の人には公開しないことをクライアント側で決定できる掲示板では、異性交際希望者の異性交際に関する投稿情報をクライアント側の意思で18歳未満の人に知らせない決定権を持ち、掲示板開設者側には決定権が無い。

 このようにクライアント側で特定性を決定する掲示板でも「不特定又は多数」が閲覧できる掲示板であると判断された場合、18歳未満に配慮している掲示板が摘発対象となってしまう可能性すらあり、青少年に対する自主的努力は水泡に帰すことになる。

 さらに、クライアントによって特定性の決定が依存されている掲示板では、18歳未満であるかどうかの年齢属性情報はクライアント側の自己申告にゆだねられている以上、少女や少年のように仮想的な人格として振舞いたい成人女性・成人男性が18歳未満のフリをして申告する可能性も少なくなく、同時に、実際には成人女性・成人男性でありながら少女や少年のように仮想的な人格として振舞っている成人と異性交際を求める者も存在し得る。

 逆に、本当は17歳だが27歳と偽って申告して掲示板に参加しているような場合もあり得る。

 掲示板開設者は、年齢申告が真の年齢か虚偽の年齢かを検証することは困難であり、虚偽の年齢の参加者の投稿だけを削除することは物理的・経済的にきわめて困難である。

 さらに、インターネットでは特定少数のクライアント同士で会話をするツーショットチャットシステムというものがあり、そこではどんな会話をするかは、当事者二名以外誰もわからないシステムとなっている。

 どんな会話をするかはクライアント同士の会話の成り行きに全面的に依存している以上、サイト開設者は利用者がどんな会話をしているかは事前に知り得ない。

 もし、このようなツーショットチャットシステムが「異性交際希望者の異性交際に関する情報を掲載し、不特定又は多数の者がインターネットを利用して閲覧できる」ものと認定され、サイトが閉鎖されるということになるとすれば、仕事の打ち合わせや政治的議論など援助交際とは何の関係も無い健全で合法的な会話も捜査の対象となり、ツーショットチャットシステムが閉鎖されることによって不便を蒙ることになる。

 だとすれば、警察の法の運用によって、結果的に違法性の無い言論までもが弾圧されることになると考えられる。

 さらに、ツーショットチャットのようなシステムを、「被疑者」側ではなくクライアント側でホストとして機能させ、チャットに入室している状態と入室チャンネルのみを掲示板で告知するというダイレクトチャットシステムも存在する。

 この場合は、会話の内容だけではなく、会話を表示する掲示板そのものが個々の会話をしている個人のパソコン上のソフトウェアで機能しているから、入室チャンネルと入室状態のみを表示する掲示板の開設者には、会話の内容は全く伺い知る事が出来ないし、掲示板開設者が会話を知る事ができない。知り得たとしても、実際にそのチャンネルが開放されているとは限らない。

 ダイレクトチャットシステムは、インターネット上で仮想的なゲーム空間を享有してゲーム世界を楽しむいわゆる「ネットゲーム」の標準的な付属機能となっており、ネットゲーム上で仮想的なキャラクターを操作しながらゲーム空間上で不特定なクライアントと「出会い」、特定の者と「会話」を楽しむことができるようになっている。

 このようなコミュニケーションにおいて、ゲーム空間において「出会った」者同士が息投合して現実空間において対価を介した性交を含む濃密な関係を共有する可能性はゼロとは言えないが、こうした可能性を含むゲームサーバの運営する「被疑者」側の事業が「不特定又は多数の者がインターネットを利用して閲覧できるようにするサービス」と認められるとすると、数百万人規模にユーザーが増大しつつあるネットゲームの運営と存続それ自体が、法的に不可能になってしまう。

 だとすれば、インターネット産業の中核を占めつつあるネットゲーム市場は一夜にして破綻し、世界最高のIT社会の実現という国家目標が警察官の一解釈によって否定されることになりかねない。

 したがって、「インターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達」する「役務」についての「警察庁解釈」は不当であるから、当該「警察庁解釈」を撤回した上で、以下の定義解釈代案を採用されたい。

 「「インターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達」する「役務」とは、インターネット上の電子掲示板に異性交際希望者の異性交際に関する情報を“掲示板開設者の許諾を得て”掲載し、一日あたり100人以上の青少年が自己申告により利用し閲覧していると確認できるサービスであると解釈している。

  したがって、掲示板開設者によって会話の内容を知り得ないいわゆる「ツーショットチャット」や、ゲーム空間上で参加者が会話がクローズドなチャット機能を実現するネットゲームのホストは、「インターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達」する「役務」とは解釈されない」

3 「当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務」について

 質問20 公然性のあるチャットと公然性の無いチャットは峻別可能か? 可能だとすればその基準を具体的に示していただきたい。

 質問21 公然性のあるチャットにおいて非公然性を作ろうとしているクライアントと非公然性を作ろうとしていないクライアントを峻別する基準を具体的に示していただきたい。

 「警察庁解釈」は、「相互に連絡することができる」とは、「サイト開設者が、異性交際に関する情報を載せた異性交際希望者とこれを見た者との間での一対一の連絡ができるようにしていること」であると解釈している。

 しかし、たとえば公然性のある空間である公園においても恋人が「一対一の会話」を楽しむことができるのと同様に、不特定多数が同時に利用し得るチャットルームにおいても、入室者が何人いるかはその時々の状況によって変化するものであるし、さらに「この人とふたりだけになりたい」などと言って入室者を別なチャットルームからの退出をお願いすることによって、公然性の無い二人だけの状況をクライアント側によって作られる場合も考えられる。

 また、チャットルームに見知らぬ5名が入室しさらに入室者が増える可能性がある場合であっても、たとえば東京在住の人二人と残り三名が北海道在住者だとすると、北海道在住者と東京在住者が会うには時間的・経済的に負担があるから「12時に渋谷のハチ公前で手には帽子」という約束は、東京在住者の二人だけが有効な会話と認められるから、この場合のチャットルームには東京在住の二人には事実上の非公然性が生まれていることになる

 以上のように、チャットルームの公然性の有無は、偶発的な発生やクライアントの作為に依存し得るものであるから、「被疑者」は偶発的な非公然性や利用者の作為によってうまれる非公然性の発生を事前に予測し、または非公然性の発生を監視し、あるいは非公然性を作ろうとしているクライアントだけを事前に排除することは困難である。

 偶発的な非公然性または利用者の作為によってうまれる非公然性の発生を「被疑者」が事前に予測し、または非公然性の発生を監視し、排除することが物理的に不可能であるにもかかわらず、そのようなサービスが「相互に連絡することができる」「インターネット異性紹介事業」と解釈され、「被疑者」が罰せられるとすれば、これほど理不尽な措置は無く、罪刑法定主義に反している。

 したがって、当該「警察庁解釈」は法的に不当であるから、当該「警察庁解釈」を撤回した上で、以下の定義解釈代案を採用されたい。

  「「相互に連絡することができる」とは、「サイト開設者が、異性交際に関する情報を載せた異性交際希望者とこれを見た者との間での一対一の連絡ができるようにしていることであり、かつ、サイト開設者が異性交際に関する情報を載せた異性交際希望者とこれを見た者との間での一対一の連絡ができるようになっている状態であることを事前に確認でき、かつ、異性交際に関する情報を載せた異性交際希望者とこれを見た者との間での一対一の連絡が「二人だけで会話を希望します」などと自己申告しているのをサイト開設者が事前に確認して排除措置がとり得るにもかかわらずことをそのような状態を事前に排除して  いない状態のことです。」

4  「事業」について

 質問22 営利目的ではない健全な出会い系サイトを罰するべきだという世論が存在しているのか? そのような世論があるという証拠を具体的にお示しいただきたい。

 質問23 他人や児童になりすまし児童誘引告知を書き込むことによってサイトつぶしをしようという悪意を持っている利用者による悪意の書込みまで想定して、サイト開設者に責任を問う法解釈は理不尽では無いか?

他人や児童になりすまし児童誘引告知を書き込むことによってサイトつぶしをしようという悪意を持っている利用者と悪意を持っていない利用者とを客観的に峻別するための基準を具体的にお示しいただきたい。

 質問24 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律の制定により、健全な掲示板開設者は、悪意の参加者による掲示板つぶしのために児童誘引文が書き込まれ、通報・逮捕・処罰される不安を持ち、健全な掲示板の閉鎖を考えなければならないと考える健全な開設者は少なくない。

他人や児童になりすまし児童誘引告知を書き込むことによってサイトつぶしをしようという悪意の参加者だけを排除し、悪意を持たない健全な参加者だけを、利用させるための方法を具体的にお示しいただきたい。

 「警察庁解釈」によれば、「事業」とは、反復継続的に遂行される同種の行為の総体をいうものであり、営利の目的の有無を問わず、利用者から料金を徴収していない場合も「インターネット異性紹介事業」に該当し得るものとしている。

 しかし、これまで児童誘引行為によって児童に刑事法上の被害が発生している事例のほぼすべてが、裁判所の事実認定において営利目的の活動であるとされている。

 また、国民の多くの出会い系サイトに対する批判は、マスコミ報道等でしめされているとおり、単に児童の危険増大可能性を根拠にしているのではなく、それによって利益を得ていることに批判と責任追及の目が向けられていると思われる。

 さらに、国会では、平成十五年五月八日の衆議院青少年問題に関する特別委員会の宮台真司参考人陳述などでも示されているとおり、誤用、乱用の危険が指摘されているところである。

 成りすましにより、児童を誘引する書き込みを電話番号やメールアドレスとともにアップロードするなどの謀略が、サイトつぶし、人気つぶし、対象が政治家である場合には政治的思惑によって発生し得ないと断じる根拠は、まったく示されていない。

 たとえば、子どもだけを相手にしている非営利の健全なサイトであっても、主催者が気にくわないからつぶしてしまえなどという悪意により、児童を誘引する書き込みが行われた場合には、主催者はそのような悪意を事前に知り、謀略を監視し、排除することは物理的に不可能であるから、悪意の謀略を事前に排除し、健全な子ども用サービスを維持することができない。

 事前に悪意の利用者の悪意を探知し、監視し、排除することができないにもかかわらず、そのような悪意のなりすましによる謀略さえも「被疑者」の責任として処罰される可能性があるとすれば、そのような法解釈は極めて理不尽であり、罪刑法定主義に反しているだけではなく、憲法の民主主義理念にも反しているといわねばならない。

 したがって、当該「警察庁解釈」は法的・憲法的に不当であるから、当該「警察庁解釈」を撤回した上で、以下の定義解釈代案を採用されたい。

 「「事業」とは、反復継続的に遂行される同種の行為であって、かつ、営利目的を持ち、かつ、利用者から料金を徴収していない場合に限られます。」

 以上に示した諸代案は、一見不自然な解釈であるかのように思われるかもしれないが、それはもともと法律が不自然で、抽象的で、矛盾を抱えた条文を持っているからであって、不自然で、抽象的で、矛盾を抱えた法律を自然で健全な社会秩序を維持するために、結果的に解釈の不自然さが伴わざるを得なくなっているものと考える。

 そもそも、コミュニティとはその開設者ではなく、クライアントによって形成されるべきものである。

 将来わたしたちが想像もしないあらゆるインターネットコミュニティにおいても、そのコミュニティの実態は、コミュニティ開設者によって形成されているのではなく、コミュニティの参加者によっても形成され得る。

 また、コミュニティ参加者によるコミュニティ開設者が意図しない利用が、インターネットコミュニティを成長させ、インターネットの文化、経済、社会を成長・発展させ、今日のインフラとしてのインターネット社会を確立してきたと言える。

 さらに、性欲や性交が人間にとって否定できない日常生活の一部である以上、そうした活動をコミュニティから分離することは不自然である。

 もし、警察官の一解釈により、人間にとって否定できない性欲や性交が否定され、インフラとしてのインターネット社会が破壊されるとすれば、社会と国家国民にとっての損失は大きい。

一匹のネズミを殺すために街全体を破壊することが無意味であることと同様、感情的で非理性的な条文解釈は悪人を懲らしめることはできたとしても国家秩序や社会秩序をも破壊してしまう。そのような“一罰百戒”や“一人の盗賊を罰するために百人の無実の市民を殺す”ようなことが絶対にあってはならないと考える。

 このような大局的観点から、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律に対しては、警察庁による厳格な解釈を心から望むものである。

 以上。


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(キタノ)
ki@tree.odn.ne.jp
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