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イラク戦争報道管制問題(番外編その5)
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2003.5.19

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日本テレビ。
氏家CEO。
テレビは第二の権力である。

日本のテレビ局が、自局のイラク戦争報道についてどのように検証しているかについて、考えてみます。

まず、代表例として、日本テレビの放送番組審議会議事録要旨より、イラク報道に関する部分を引用します。

第366回日本テレビ放送番組審議会
http://www.ntv.co.jp/anata/20030406.html

G: “バンキシャ”の話をさせて頂く前に、報道局の方もいらっしゃるので報道一般について言っておきたいんですね。今イラクで戦争が行われているんですが、正直言いまして、日本のニュースはほとんど見てないんですよ。

理由はいくつか、人によって違うと思うんですね。ひとつは日本のニュースはある程度長い時間やっているかもしれませんが、断片的であるというということですよね。それから日本だと軍事評論家みたいな人が出てきて、あの人たちがハイな様子を見るのは嫌というので、CNNとか見ちゃうんですよね。

どうして見ちゃうのかなと思うと、うちの嫁さんなんか全く政治無関心なんですけど最近ずっとCNNつけてるんですよ。

どうしてかというと腹が立たないって言うんですよね。

もし僕が考えるとしたら、記者なりクルーなりをもっと別なところに行かせて、我々には何にも分かりませんでしたっというのをやるのが、結構真相報道だったりするかなというような印象を受けました。

H: イラクのフセインについては、影武者の存在にかなりこだわって骨格がどうとか手術をされたとかしたとかいう証言まで出ていて非常に担当記者はよく取材をなさったと思いますけれども、ただ日本テレビだけでも私はこれと同じ物をニュース番組の中、夕方の番組、夜の番組でも拝見したような気がいたしますので、報道悲願の週一の本格的なニュース番組“バンキシャ”ということであるならば、もしかして使いまわしのものであったとしたら大変残念だなという風に感じました。

I: 問題はやっぱり掘り下げ方、あるいはそのニュースの斬り方に若干食い足りないところがあったなという風に思いました。

イラク報道について言えば、コメンテーターのコメントもやっぱり全体として突っ込み不足かなと。

時間の制限もあったのかもしれませんけど突っ込んだコメントをしておられなくて、私はややあのお二人のコメントとしては期待に反したなという感じを持ちました。

古市アナ: 各委員の発言に答え、番組担当者からは次のようなコメントがありました。

村山アナ: 高視聴率という成功体験を続ける中には危機が潜んでいる。伝えるべきニュースを相応のボリュームや、手段で伝えるというところをつい忘れてくると思う。また、VTRとスタジオ展開の長さの割合を満足いくようにできるかが毎回の悩み。取材も限界を試しながらやっていることをご理解頂きたい。


日本テレビの番組担当者のコメント。視聴者をバカにするのも程があります。

この担当者自身はある意味正直に自分の立場を説明したのだと思いますが、審議会の委員の疑問に、まったく答えていません。

番組担当者のコメントは、「高視聴率という成功は局員にとって再優先事項だから見逃してくれ」、と言っているようにも聞えます。

日本テレビのなかに存在する視聴率至上主義は、会社の自浄不能な体質なのでしょうか?

だとしたら、国家管理統制の下で放送局が管理されても仕方ありませんね、日本テレビは。(もちろん、私はそのような状態を望んでいるわけではありませんが)

イラク報道についての指摘で、委員が、「戦争報道は断片的」「イラク報道を見ていて腹が立つ」「使いまわしのものであったとしたら大変残念」と指摘している点については、まったく正しい指摘だと思います。


2003年3月20日、午後16時30分頃の日本テレビの映像。
イラク戦争開戦を報ずる緊急報道番組。
戦争したい側の言い分の映像が、延々とテレビで流れ続けた

私は、日本テレビのすべての番組が悪だと言うつもりは私にはありません。

ただ、バンキシャや報道番組の多くが「断片的」などという印象を視聴者が受けているその理由は、やっぱり戦争を指導している国家の視点や映像ばかりが安直に画面に流され続けて、市民の視点や情報を排除しているからではないでしょうか。

実は、私などがこういうことを書かなくても、放送局には毎日大量の苦情や要望が来ています。

でも、それらの苦情や要望は、一部の放送局を除いて、番組審議会の耳に入ることはまず無く、また、現場に届くことも無く、仮に届いたとしても一読してゴミ箱に捨てられ反映されることはありません。

たとえば、日本テレビでは、モニター制度を作ってモニターの報告を番組制作現場に送っていると番組審議会で説明していました。

けれど、一般の視聴者の意見については、番組審議会や制作現場に到達していないことを否定していません。

結局、苦情の類は聞くだけ聞いて、「貴重なご意見ありがとうございました」と受付の人が返事して終り。ガス抜きです。

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ところで、日本テレビの番組審議会は、2002年4月28日、メディア規制3法案について議論し、反対声明を出しました。

この番組審議会の模様を報じた「あなたと日テレ」で、山王丸アナと村山アナは、日本テレビの立場をこう説明しています。

2002年4月28日 日本テレビ「あなたと日テレ」
http://www.ntv.co.jp/anata/20020428.html

山王丸アナ: 憲法で保証された『表現の自由』は国民一人一人の基本的な権利で、民主主義社会の基盤であると言われます。それは自由な情報の流れにより、世の中がどうなっているかを一人一人が知る事が民主主義の出発点であるという事です。これが、いわゆる『国民の知る権利』です。

村山アナ: 何が起きているのか取材し、報道するのがメディアですが、この活動は『国民の知る権利』に奉仕するものであるとの考え方が定着しています。法律により規制されるのではなく、視聴者の皆様のご意見、ご批判を受け止め、番組に反映させていく、あるいは放送局の考えをこうした番組で直接説明していく、というのがメディアのあるべき姿だと考えています。


言っていること自体は正しい見解です。

問題は、一般の視聴者の苦情や要望を、具体的にどうやって現場に反映させていくのか。そのシステムが存在していないという点です。

「視聴者の皆様のご意見、ご批判を受け止め」るために妥当な具体的なシステムは、日本テレビには十分に用意されているとは思えません。

少なくとも、イラク戦争報道に関する検証とその結果の番組への反映は、日本テレビかに関して言えば、結果的に不充分だったと認めざるを得ません。

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私は、すべての放送局が苦情や要望を番組に反映することを怠っている、とは考えていません。

たとえば、テレビ朝日など一部の放送局では、一定程度、視聴者の声を番組に反映させる具体的なシステムか存在します。

テレビ朝日は、一般の視聴者からの苦情や局への意見を、局への苦情も含め、自ら公開しています。

以下、イラク戦争に関する部分を引用します。

テレビ朝日番組審議会 課題番組 「TVタックル」(3月21日〜4月15日)
http://www.tv-asahi.co.jp/anb/banshin/kiroku.shtml

問い合わせ 340件
苦情 2件
要望 17件
感想 120件
その他 2件
合計 481件

視聴者の声

これほど重大な問題を国会議員が笑いながら話すとは・・・。
イラク戦争は進行形で、人の生死に直結する最重要課題ですよ。
襟を正すべき国会議員の発言なのですか?レベルが低すぎます!

この番組はもうレギュラー達の手の届かないものになってしまっているのではないですか?
昨日の放送はイラクでの戦争を笑っているものでした。
何を言おうと「バラエティーなのだから・・」と言うつもりかもしれませんが、その人権感覚の無さに心が冷え冷えとしました。
リアルタイムで人々が殺され死の恐怖の中にいるというのに、面白半分に笑い、笑い声も入れて・・。
一体どうしてこんなに無頓着にいられるのですか?
レギュラーのビートたけしや大竹まことは苦々しい表情でただ眺めているだけで、番組を引っ張っていく気はないようですね。
この番組を制作する側、またテレビ朝日の局としての姿勢が問われていくと思います。

視聴者応答記録(抜粋)

米軍の支援物資をもらうイラクの方々にたいして「アメリカ万歳くらい言うべきだ」と軽々しいコメントをしていましたが、彼らの気持ちを察したらそのような発言は出来ないと思います。

私は戦争を経験した世代ですが、やはり米軍からキャラメルやチョコレートを貰いながら、心の中では悔しくて歯を食いしばっていたものです。

戦争経験のない世代が作っている番組だというのはわかりますが、もう少し配慮があっても良いのではないでしょうか。
(スーパーJチャンネル)


笑いや怒りは、表現方法としてとても大事な要素で、笑うから人権に反しているとは私は思いません。

笑われるべき愚かな政治家を笑うことは、正しい表現だと思います。

笑われるべき政治家が笑われずに、マジメな顔で賞賛している状態の方が悪い状態です。

ただ、視聴者の意見にもありますが、笑いの対象として、死の恐怖にいるイラクの市民の存在を忘れて笑ってしまうのはいかにも軽率ですし、笑われるべき国内の政治家を笑わずにフセイン一人を笑っているのは、不公正・不公平でした。

もし、国会でろくな議論もせずウダウダやっている日本の閣僚の姿を見せて、それを笑っていたら、バランスのとれた良い番組になっていたに違いありません。


2003年3月31日、テレビ朝日スーパーJチャンネル
バクダッドから遠く離れたヨルダンでイラク現地取材のふりをする
テレビ朝日の山野孝之記者の映像。
日本の放送局社員はイラク国内で取材をしない。
記者自身の目で見て耳で聞いた事実がテレビには少な過ぎる!

テレビ朝日には、視聴者の声を謙虚に聞く姿勢が求められますが、このように局への声を積極的に公開した点は評価できます。

問題なのは、こうした視聴者の声をにぎりつぶし、疑問の声の存在を公開せず、意に介さない他の放送局の閉鎖的な姿勢です。

日本テレビは、番組審議会の議事録の一部を公開していますが、発言者氏名は隠して公表していません。

実は、日本テレビの番組審議会議事録は総務省に送付されていますか、そちらの議事録には発言者指名が公表されているという情報もあります。(情報公開法で総務省に情報請求可能なので、知りたい方は情報公開請求してください)

お役所総務省には開陳し、視聴者や国民には内部情報を隠す。いったい日本テレビという局の体質は、どうなっているのでしょうか?

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日本のすべての無線局免許を持つ民法テレビには、「放送番組審議会」という組織が設置されています。

放送番組審議会は、放送法第3条の4と同法第51条に基づく公的機関で、番組内容の充実・向上を目指すことを目的に設置されることになっており、番組内容のチェックと自浄の役割を担うことになっています。

放送法で放送番組審議会が設置されたその理由は、放送局の報道などが公権力から介入されないために、番組を局自身で検証し番組にフィードバックさせるという、いわば政府による番組の管理統制を口実を与えない役割を局自身が果たすことを求められていたからです。

しかし、放送番組審議会の多くが、放送の番組内容のチェックを果たさず、形骸化し、番組の合評会のような付属物に成り下がっているようにも思われます。

メディアのだらしなさを見るにつけ、個人情報保護法などメディア規制に関わる法制度が国会をスイスイ通ってしまう理由が、わかるような気がします。

(AP Photo/Ali Haider)
日本テレビが報じなかった映像。
2003年3月27日、イラク、バクダッドの病院の病室の光景。
この日、バクダッドへの米軍のミサイル攻撃で14人を殺し
30人が負傷した。彼はその一人。
イラクには経済制裁などで医薬品が不足しており、
足を切断しても止血薬や鎮痛剤は投与されず、
大量の出血と激痛に長時間耐えなければならない。

私は、無線局としての放送局が、国民の財産である周波数資源を独占的に使用する権限が国民から与えられている以上、その貴重な周波数資源を国民の公共的な利益のために使用する責任があると考えています。

しかし、同時に、放送局の報道活動などが政府機関によって統制されるべきではなく、言論表現報道といった自由の確保が必要だと考えます。

であるからこそ、放送局は、政府による番組統制を回避する意味でも、国民から与えられた周波数資源を国民のために使うべきですし、そのための公共性を確保するとともに、自律的なチェック機関としての番組審議会を国民が期待するような形で有効に機能させる必要があると思います。

残念ながら、多くの放送局、特にネットキー局は、国民のための公正な番組作りをしているとは、私には思えません。

情報公開も十分とは言えません。

すべての放送局がダメだと言うつもりはありませんが、公開されている番組審議会の情報や質疑応答を見る限り、はたしてこれで番組のチェック機能といえるのか、疑いたくなるようなおそまつな審議が多過ぎます。

関連ページ
資料/NHKへの情報公開請求(イラク戦争報道について)

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(キタノ)
ki@tree.odn.ne.jp
http://zirr.infoseek.ne.jp/
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