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イラク戦争報道管制問題(その12)
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2003.5.3

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フジテレビ ワッツ!?ニッポン
フジテレビの自称映像週刊誌「土曜LIVE ワッツ!?ニッポン」
米国ヨイショは雄弁、戦争の大義には沈黙。

北の系の読者のめそすけさんから、フジテレビのニュース娯楽番組「ワッツ!?ニッポン」(自称「映像週刊誌」)のイラク報道について、電子メールで情報をいただきました。

以下、めそすけさんの許可を得て転載します。(めそすけさん、ありがとうございました)

 

今日(4月26日)、フジテレビの番組、多分「ワッツ!?ニッポン」だと思うんですがイラクに行った従軍記者が出ていていました。

記者に対する質問は「戦争の被害にあった人のこと」とか現地に行った人じゃないとわからない事には一切ふれていませんでした。

記者も記者で、名前は忘れましたが「砂嵐が酷くて大変だった」とか「砂嵐の中で眠ったらもう目が覚めないんじゃないか」とかばっかりで現地の状況については全然語ってませんでした。

しまいには「爆撃のときすごい音でアメリカの強さを感じた」みたいなアメリカをヨイショするような発言まで・・・。

それでその発言に対して他の出演者からツッコミというかそういうのはなくて流された感じでした。

なんというか空気が「戦争についてはふれたくない」みたいな妙な気まずい空気でした。

圧力とかがあって放送できないのもあると思うけどこういう空気になるのは怖いと思いました。


参考リンク

■フジテレビ
土曜LIVE ワッツ!?ニッポン
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/satlive1/

米軍がバクダッド入って以降、日本の少なくないテレビ局がイラクに派遣(従軍)させていた記者を日本に帰国させ、帰国にあわせて「イラク現地取材」とは名ばかりので実態は「邪悪なフセインをやっつける米軍大活躍ストーリー」の娯楽番組を放送しています。

私は観ていませんが、フジテレビの「「ワッツ!?ニッポン」は、どうやらそのテの"戦争エンターテイメント番組"のようなものだったようですね。

良心的な、というか本来的な意味でのジャーナリズムを自認するプロデューサーや関係者は、「戦争はエンターテイメント(娯楽)ではない」という姿勢を崩さず、現場主義と客観報道に基づいて、「実際に目で見、耳で聞き、心で感じたこと」を記者に語らせています。センセーショナルな番組演出や視聴率を呼び込む番組宣伝をしないプロデューサーもいます。

私は、そういう良心的な報道番組がまだ日本のテレビ局に、ごく一部ですが残っていることを知っていますし、そういう番組を評価し、応援しています。

ですが、視聴者にとって、そういう良心的というか、本来的な意味でのジャーナリズムと思える番組は本当に一部です。少なくない報道番組が、イラク戦争報道をエンターテイメント化しています。

たとえば、日本テレビ「女性従軍記者の36日間」はその一例でしょう。

Yahoo!ニュースでスポニチの「「死覚悟」従軍女性記者が会見」という番組宣伝記事が掲載されていましたが、なんとこの記事、カテゴリーが「エンターテインメントニュース 」に分類されています。(苦笑) 「Yahoo!ニュース」のカテゴリー処理の正確さには頭が下がります。(ウェブ担当者に拍手)

参考リンク

・「死覚悟」従軍女性記者が会見
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030425-00000001-spn-ent

■日本テレビ
2003年4月28日オンエア/「女性従軍記者の36日間 今だから公開できる記者たちがイラクで命をかけた映像」
http://www.ntv.co.jp/36days/


私は、この「女性従軍記者の36日間」の番組宣伝を20回近く見ました。バラエティの特番並みの番宣の力の入れようひとつとっても、この番組がエンターテイメント番組(娯楽)だったことが見てとれます。

「女性従軍記者の36日間」の内容ですが、視聴率が集中し注目された番組前半は、アメリカ軍大活躍の映像でした。

後半になってやっとバクダッド市民の映像が流れ、1時間半の番組の中で映像として映し出された死体は、路上に転がるイラク兵一体のみでした。しかも、記者が乗っていた車はあっというまに通り過ぎたので、画面に映っていたのは3秒くらいでしょうか。

民間人戦没者2000人、正規軍推定戦没者2万人〜12万人。36日間も取材していて戦没者を映像で確認できたのが一人だけというのは、どう考えてもおかしいでしょう。

パレスチナホテルへのアメリカ軍への誤爆直後の映像では負傷した記者の姿が流れたり、誤爆を受けた民家の映像では「赤ちゃんが死んだ!」と訴える遺族の叫び声なども放送されましたが、負傷した姿、死体、遺族の姿などは例外的な扱いで、まさにそれが日本テレビにとって「今だから公開できる」映像だったように見えます。

日本テレビ「女性従軍記者の36日間」
日本テレビの娯楽番組「女性従軍記者の36日間」
「兵隊さんご苦労様。よく頑張った!ありがとう!」
と言いたくなる“管理された”映像が延々と流れた

視聴率が集まった従軍取材映像や今泉記者へのインタビューでは、従軍取材の必要条件として日本テレビが同意した合衆国軍の取材期成ルールについては、一切説明がありませんでした。

番組を観ていた視聴者は、米軍が記者の自由な取材を制限し、軍当局によって検閲を受ける可能性があったことなど、思いもしなかったでしょう。

つまり、「女性従軍記者の36日間」は、管理統制されていることを意識させない映像番組だったのです。

「女性従軍記者の36日間」では、「兵隊さんご苦労様。よく頑張った!ありがとう!」と言いたくなる映像が延々と流れました。

たとえば、緊張した兵士の横顔、家族からの手紙を読んで微笑む兵士の顔、砲撃の中の兵士の姿、自動小銃を持って戦場に出ている兵士の姿、なとなど。

日本テレビ「女性従軍記者の36日間」
日本テレビの娯楽番組「女性従軍記者の36日間」
笑顔を見せる兵士の姿。人間を殺す時の兵士の表情や、
人間の死体を見ている兵士の表情は放送されなかった。

勇敢で誠実な兵士というイメージは、
戦争に大義があるかのような錯覚を与える

軍隊にとって従軍取材記者に兵士の姿を撮影させることの最大の効果とは何でしょうか? 

それは、兵士への感謝と、戦争目的それ自体の正しさを視聴者に与え、「戦い殺害しなければならない“敵”がいるのだ」という軍隊によって非常に重要な政治的なメッセージを与えることではないでしょうか。

「こんなふうに命がけで戦っている兵士がいるんだ!」「命がけで戦う価値がこの戦争にはあるんだ!」「こんなふうに誠実で忠実な人たちが戦場で戦っているのだから、戦争に大義が無いはずがないではないか」「攻撃されているイラク兵に罪があるのだ」

こういう軍隊にとって都合が良い一方的なメッセージを、世界に伝える効果が、これらの映像にはある。少なくとも、情報操作を担当する軍事担当者はそう考えている、ということです。

たとえば、「女性従軍記者の36日間」は、「攻撃している目標に民間人がいないことを祈っている」などと一見殊勝な兵士の言葉を、映像で紹介していました。

でもよく考えてみてください。

戦争自体に大義が無いのですから、戦っているイラク人への攻撃は、民間人であろうと兵士であろうと、全部「誤爆」です。兵士と戦っているから戦争の大義が生じるなどということはありません。

しかし、映像はそれを可能にするのです。それが映像というものの「効果」です。

2003年3月16日(ロイター / ブライアン・シュナイダー)
2003年3月16日(ロイター / ブライアン・シュナイダー)
アメリカマサチューセッツ南ボストンの第103回聖愛国祭の軍事パレード。
軍事パレードで大勢のアメリカ市民が反戦を訴えていた。
反戦と従軍拒否こそが愛国的だというメッセージを
含む映像を日本テレビが放送することはまれだ。

私は、従軍取材を100%否定するつもりはありません。どういう戦闘が行われているのかを理解することは意味があります。

大事なことは、従軍取材の情報のみによって戦争の大義に関する議論の対立軸が揺らいではならないということです。

だから、ある種の取材と報道のバランスが必要です。

では、テレビ局はどうすればよかったのでしょうか? 

簡単なことです。

従軍取材と同程度以上、「従民取材」をし、放送で流せばよいのです。

「戦」と「民(平和)」のバランスが、日本のテレビには欠けています。

ロサンゼルスの反戦デモ
ロサンゼルスの反戦デモ。
「退役軍人はここにもいる」とアピールし、反戦と
良心的兵役拒否を訴える反戦海兵隊員。

反戦と従軍拒否こそが愛国的だというメッセージを
含む映像を日本テレビが放送することはまれだ。

なぜ日本テレビやフジテレビは「従民取材」をしないのでしょうか?

命がけで「従軍」取材ができるのなら、同じくらい命がけで「従民」取材もできるでしょう。

ここで私が言っている「民」とは、単なる武器を持たないという意味での民間人ではありません。

「戦争に参加しない人」という意味での「民」です。ですから、“戦争に参加することを拒否した軍人”を含みます。

従軍取材ばかり放送され「従“民”取材」が極めてアンバランスな形で放送されていること、軍隊の派遣に疑問を持っている人々の姿が映像で流れていないことが、一番の問題です。


2003年4月13日、スペイン市民の反戦人文字。
武力侵攻がはじまっても、
世界中で反戦の声が広がり続けている。

テレビは「従軍」取材よりも「従民」取材に
もっと力を注ぐべきではないだろうか。

命がけで人を殺す人は英雄ではありません。

真の英雄とは、人を殺すことを命がけで拒否できる人です。

メディアはカメラを向けライトを向ける相手をもっとよく選ぶべきではないでしょうか。

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(キタノ)
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