Subject: 【情報】大阪府議会、育成条例改悪案審議入り
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北野です。
大阪府は、2月、「大阪府青少年健全育成条例の改正案の概要に対する府民意見募集の結果」と「大阪府青少年健全育成条例(案)」を、府ウェブサイトに公表し、大阪府青少年健全育成条例(案)を大阪府議会2月定例会に上程しました。
大阪府は、2月19日の2月府議会定例会開会日に大阪府議会に「大阪府青少年健全育成条例(案)」を提案し、現在大阪府議会は本会議審議中です。
大阪府議会での条例審議は、3月3日の一般質問で本会議審議は終了し、3月5日、6日、7日、10日の委員会審議にて実質審議に入り、府民と府議会議員の抵抗が無ければ、3月13日の本会議採決で可決されます。
青少年健全育成条例の最終修正案は、[ami-ml 2362]で紹介した通りであり、如何ながら、府民のパブリックコメントによって規制が取り消されるということはありませんでした。
・有害図書対象に「犯罪を誘発するような図書類」を追加する
・包括指定条件を1/3ページ以上から1/5以上に悪化させる
・包括指定条件を連続3分以上から合計3分以上に悪化させる
・知事に有害図書類の陳列方法の指定権限を持たせる
・図書類自動貸出機を自販機と同様に規制対象とする
・学校やネットカフェの端末の青少年利用を制限する
ただ、最終的につくられた「案」を詳細に検討すると、当初想定された条例案よりも強化された部分と、わずかに規制が後退した部分があるようにも思われます。
1 包括指定対象はエロ漫画、エロアニメ、エロゲー、エロビデオなどのみ。
2 殺人漫画、殺人ビデオ、犯罪漫画、犯罪ビデオは包括指定対象外。
3 包括指定対象となるエロ漫画やエロビデオでも、「性的感情を刺激するものでないと認められるもの」は包括指定対象外
4 エロ映像は、画像が無く音声のみの場合も「映像」とみなされる。
5 ネットカフェ等の青少年の端末利用規制の方法は、フィルタリングソフトの導入に限定せず、青少年の利用を一律的に排除するなど「その他の適切な方法」であればよいことになった。
1と2については、殺人や犯罪を描写する漫画や映像、ゲーム関係者にとっては朗報ですが、エロ漫画関係者にとっては「エロ」に対する法的差別がさらに広がったと解釈することもできそうです。
3については、「エロ」に対する法的差別の一定の“歯止め”を設けることによって芸術活動を制限しないようにしたと府側は考えているようです。
一見、エロ漫画関係者にとっては朗報かなとも思われますが、それは全く逆で、将来、表現の自由の解釈をめぐって裁判になった時、この“歯止め”は違憲判決を出さないための「抗弁」として機能し合憲判決の根拠となりますから、エロ漫画関係者にとっては、事実上、違憲訴訟による抵抗手段を奪われることになります。
また、実際の条例適用の現場では、「全裸若しくは半裸での卑わいな姿態又は性交若しくはこれに類する性行為で規則で定めるものを描写し、又は撮影した図画、写真等を掲載」したと“警察が”判断した場合に、「性的感情を刺激するものでない」と“警察が”芸術性などを認めることは(日頃から警察に“おみやげ”を渡している業者や警察と癒着している暴力団関係者を除いては)考えられないことから、一般の健全なエロ漫画関係者などにとっては、事実上、有形無効なただし書き条項と言えます。
4については、たとえばアニメや映画、テレビ番組のいわゆる「濡れ場」のシーンで、キスをしているカットから燃え上げる暖炉や揺れるランプの光にカメラフレームがパンして音声で喘ぎ声が聞える、といった映像演出も「包括有害指定」の対象となり得るということになります。
包括指定は「全裸若しくは半裸での卑わいな姿態又は性交若しくはこれに類する性行為で規則で定めるものを描写」があるという前提があったはずです。性交の描写が無いのに音声があれば卑わいな姿態の映像を描写したとみなされるということは、「裸やセックスがあるかどうか」ではなく「その映像演出が性的かどうか」が包括指定対象となるわけで、包括指定制度の大きな制度的転換と言えます。
この「音声規制」は、当初わたししたちが想定しておらず、突然出てきた規制であり、条例案に導入することはまったくもって不当です。
5については、ネットカフェで「フィルタリングソフトを購入しろ」と当局が店に指導した時に、「不況でそんなもの買うお金は無いです。それにフィルタリングを導入したら成人の客がいなくなってしまいます」などと店が抗議した場合、「だったら青少年は全員追い出せ。もし青少年が使ってたら営業中に50人くらい入って“指導”することになるぞ。そうなりたくなかったら、ごたごた言わずに大阪府の言うとおりにしろ。わかったな」と言える法的根拠を与えることになります。
条例上の“努力義務”に強制力が無いとはいっても、どんな店も営業中に当局が指導にきてほしくはないでしょうから、“努力義務”規定に基づくフィルタリングフソト導入指導は、事実上の強制義務と考えてよいと思われます。
以上の理由により、府民のパブリックコメント後に策定された大阪府青少年健全育成条例(案)は、当初わたしたちが想定したものよりも、規制が不当に強化されていると考えられます。
大阪府が公開した「府民意見とこれに対する大阪府の考え方」では、条例に懐疑的な意見・疑問が提出されていましたが、大阪府はいずれのコメントについても否定的でした。
「府民意見とこれに対する大阪府の考え方」では、「アメリカ最高裁で創作上の作品まで規制の対象にするのは表現の自由を踏みにじるものとして児童ポルノ防止法の違憲判決が出ているにもかかわらず、改正案を上程する根拠は何か」との条例趣旨についての疑問が寄せられました。
大阪府は、「児童ポルノ法と条例は関係ありません」と意見を切って捨てています。
しかし、合衆国最高裁判決を詳細に検討するならば、
「CPPAは、成人が聞く権利のある範囲内の言論を、それを児童に聞かせないために、完全に沈黙させるべきでないという原則抵触する」
と「過剰公議の原則」の違反を支持し、さらに
「…ポルノが…、違法行為を助長するという主張は無効である。なぜなら、言論に単に不法行為を助長するという傾向があるというだけで、言論と切迫した違法行為との間の直接的関連を示すものが何もないため、禁止の理由としては不十分だからである」
と「現在の危険の法理」を支持しています。
これら合衆国最高裁による憲法解釈判断は、大阪府が提出している青少年健全育成条例改正案の改正趣旨を否定するものであり、「判決とは関係無い」との大阪府の判断は不当です。
参考:合衆国最高裁違憲判決
・原文(シラバス及び各判事の意見書)
http://supct.law.cornell.edu/supct/html/00-795.ZS.html
・弁護士の奥村徹氏によるシラバスの邦訳
http://homepage1.nifty.com/KLPOKU/us-j.htm
インターネット端末使用規制について、大阪府は第八条を追加するとの対応を表明しました。しかし、大阪府は規制そのものは撤回していません。
府民からは、
1 フィルタリング義務は事実上の事前検閲である
2 見ることを規制するのではなく、見たことを指導・教育すべき
3 「フィルタリング」という文言を外すべき
4 有害情報から青少年を守ることは不可能である
5 図書館等へのフィルタリングソフト導入推奨に反対する。必要な情報が恣意的に遮断されることは非常に問題である
6 成人がネットカフェを利用する場合も、フィルタリング規制により閲覧の自由が妨げられるのは不条理であり、いくら不特定多数とはいえネットカフェなどにフィルタリングを強要するのは筋違い
7 フィルタリングを強要するのであれば、そのフィルタリングに対し意見を言えるように、誰がどのようなフィルタリングを制定したのか、連絡先を明示しておくべき
8 答申においては、フィルタリングが技術的には完成したものではないという認識が示されているにもかかわらず、条例案ではフィルタリングソフトの利用を推すのはなぜか
9 フィルタリングソフトにおけるフィルタの基準は誰が決定するのか。また、その基準はいかなるものか。
など、いずれも根拠のある正当な疑問や意見が寄せられ、情報遮断政策の誤りと重大な欠陥が指摘されていましたが、大阪府はこれらのコメントに正面から応じず、従来の立場を繰り返すだけでした。
大阪府の非科学的、情緒的な姿勢に基づく情報遮断政策こそ、インターネットのビジュアル文化にとって問題ではないでしょうか。
尚、「条例案はかなり規則に内容を譲っているがどのような内容になるのか」との大阪府民のコメントに対し、大阪府は
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「区分陳列の方法を定めた規則は、3月中に公布する予定です。犯罪を著しく誘発するおそれのある図書類の基準を定めた規則は、大阪府青少年健全育成審議会に諮問し、答申を経て公布することとしています」
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と回答しています。
つまり、このままでは、規制の実質的内容を府民に明確にしないまま、条例改正によって大阪府に規制の実質的内容の白紙権限だけを与え、権限が与えられた知事が自分で規制内容をつくることになります。
事実上の“全権委任”です。
不確定的な規制制定権限を盛り込んだ条例案は、規制の妥当性のなさはむろんのこと、民主主義原則・住民自治原則から考えても、認められるべきではありません。
実質規制を定める「規則案」について、府議会できちんとした審議がなされ、都知事が定める規則の想定内容が解明され、実効性ある“歯止め”を条例に盛り込み、“不当な条例を提案した知事の責任を追求することができるかどうか、大阪府議会と府議の活動が注目されます。
良心のある府民の方は、是非、大阪府青少年健全育成条例(案)にNOを表明し、3月3日の本会議一般質問、3月5日からの4日間開かれる委員会審議を傍聴、府議への要請行動など、府議会の動向に注意を払い、抵抗と抗議を続けていただければと思います。
議会は既にはじまっていますので、疑問のある方、行動する意思のある方は、至急の対応をお願いします。
■大阪府青少年課
・大阪府青少年健全育成条例の改正案の概要に対する府民意見募集の結果
http://www.pref.osaka.jp/seishonen/pubcomkekka.html
・大阪府青少年健全育成条例の改正に対する府民意見の募集について
http://www.pref.osaka.jp/seishonen/kenzen.html
・大阪府青少年健全育成条例(案)
http://www.pref.osaka.jp/seishonen/joreianzenbun.html
・大阪府青少年健全育成条例
http://www.pref.osaka.jp/seishonen/shirimasen.html
・大阪府青少年健全育成条例案の新旧対照表
http://www.pref.osaka.jp/seishonen/taisyohyo.pdf
・府民意見とこれに対する大阪府の考え方
http://www.pref.osaka.jp/seishonen/fuminiken.html
http://www.pref.osaka.jp/seishonen/fuminiken.pdf
・大阪府青少年問題協議会答申
http://www.pref.osaka.jp/seishonen/1411toshin.html
■大阪府議会
http://www.pref.osaka.jp/gikai/index.html
以下、大阪府青少年健全育成条例(案)より、主な改正部分を抜粋して転載します。(条数移動や語句修正は省略)
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【府の基本施策策定義務追記】
(府の基本施策等)
第八条
六 青少年が情報社会において自律性や自主性をもって対応できるようにするための取組を推し進めること。
【有害指定内容の追加】
(有害な図書類の指定)
第十三条
三 青少年の犯罪を著しく誘発するおそれがあり、青少年の健全な成長を阻害するもので、規則で定める基準に該当するもの
【有害性の除外要件の追加】
第十三条 2 ただし書き
ただし、その内容が主として読者又は視聴者の性的感情を刺激するものでないと認められるものについては、この限りでない。
【性描写図書類の包括有害指定条件を1/3から1/5に引き上げ】
第十三条 2
一 書籍、雑誌、コンパクトディスク又はデジタルバーサタイルディスク(以下「書籍等」という。)であって、全裸若しくは半裸での卑わいな姿態又は性交若しくはこれに類する性行為で規則で定めるものを描写し、又は撮影した図画、写真等を掲載し、又は記録するページ(表紙を含む。以下同じ。)等の数が当該書籍等のページ等の総数の五分の一又は合わせて三十ページ以上を占めるもの
【性描写図書類の包括有害指定条件を連続3分から合計3分に拡大】
【包括有害指定条件を「映像」から「音声又は映像」に範囲拡大】
第十三条 2
二 ビデオテープ、ビデオディスク、コンパクトディスク又はデジタルバーサタイルディスクであって、全裸若しくは半裸での卑わいな姿態又は性交若しくはこれに類する性行為で規則で定めるものを描写した場面が合わせて三分を超えるもの(映像は連続しないが、音声が連続する等実質的に連続する描写の時間が三分を超えるものを含む。)
【自動販売機だけの規制を自動貸付機を含む自動販売機「等」に拡大】
(図書類の自動販売機等による販売又は貸付けの届出等)
第十六条 図書類の販売又は貸付けを業とする者は、自動販売機又は自動貸出機(以下「自動販売機等」という。)により図書類の販売又は貸付けを行おうとするとき(自己の経営する店舗の店頭に自動販売機等を設置し、図書類の販売又は貸付けを行おうとするときを除く。)は、あらかじめ当該自動販売機等を管理する者、当該自動販売機等の設置場所その他の規則で定める事項を知事に届け出なければならない。当該届出に係る事項を変更し、又は当該届出に係る販売又は貸付けをやめたときも、同様とする。
【ネットカフェ・学校などへの青少年使用制限義務の新規追加】
第三章 インターネット利用環境の整備
(インターネット上の情報に係る努力義務)
第二十三条 インターネットを利用することができる端末装置(以下「端末装置」という。)を青少年に利用させるために設置する施設の管理者その他端末装置を公衆の利用に供する者は、当該端末装置を青少年の利用に供するに当たっては、フィルタリング(インターネット上の情報について、一定の条件により、受信するかどうかを選択することをいう。)の機能を有するソフトウェアの活用その他の適切な方法により、青少年の健全な成長を阻害するおそれのある情報の視聴を防止するよう努めなければならない。
【学校・ネットカフェへの助言義務の新規追加】
(助言及び周知)
第二十四条 府は、前条の規定に基づく取組についての必要な助言を行い、及び同条に規定する方法の周知に努めるものとする。
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(転載自由)
北野 桂
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