Subject: 【資料】出会い系サイト規制関連
--------
出会い系サイト規制問題を考えるにあたって、資料をいくつか紹介し、私見を書きます。
まず最初の資料ですが、第5回青少年の育成に関する有識者懇談会で提出された、中村雅子氏による資料。
これは出会い系サイトなどの媒介メディアに対する規制の無効性という点で、参考になります。
・第5回青少年の育成に関する有識者懇談会
報告資料 武蔵工業大学環境情報学部 中村雅子
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/ikuseikon/kondan020725/05shiryou/05shiryou1.pdf
この資料で示される「第4回情報化と青少年に関する調査の概要」(H13年11月8日-27日)によれば、これは携帯電話やインターネットに限りませんけれど、
「メディア利用で対面コミュニケーションや連帯感はむしろ深化する」との分析が示されています。
世間では、メディアによる関係性は、表層的な関係性で享楽的性交渉だけに終始しているかのようにイメージされていますが、実際には人間関係はメディアを利用しないケースよりも深いケースが少なくないケースがあることが推測されています。
法律上の夫婦の乾いたセックスより、出会い系サイトの援助交際の方が濃密な人間関係を形成し得ることもあるとも解釈できます。
また、中村雅子氏は、これらの調査分析をふまえ、コントロールされない情報への接触は不可避であり、発信者が多様でコントロールしきれない状況が存在する以上、情報統制による隔離政策には限界がある、と提案しています。
ということは、出会い系サイトを規制してもしなくても、結果は同じとも解釈できます。
さらに中村雅子氏は、情報の見分け方やメディアとの付き合い方を教えること、すなわちメディアリテラシーの必要性を説くとともに、青少年に対する試行錯誤の許容、年代の近いアドバイザの養成、ユーザ・コミュニティの育成を提言しています。
中村雅子氏は、出会い系サイトの規制などという情報遮断政策は採用しておりません。
結論として、青少年の情報機器に詳しい専門家の分析によれば、出会い系サイト規制は、規制目的の妥当性、規制方法の有効性、規制方法の実効性につき科学的な分析や裏づけがなく、子育てにナイーブに反応する親に対する感情対処的な立法政策にすぎないと考えられます。
次に、一昨年改正され、テレクラやインターネットのエロ映像ダウンロード販売(エロマンガのダウンロード販売を含む)に対する規制を盛り込んだ風営法改正案(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案)の国会審議議事録が、出会い系サイト問題を考える上で参考になります。
・衆議院 衆議院第151回国会 内閣委員会 第17号(2001/06/13)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000215120010613017.htm
二年前のこの内閣委員会の質疑において、風営法改正によりテレクラが締め出されることで出会い系サイト問題が加速・増大するということ、つまり法律でテレクラ規制をすることが原因となって出会い系サイト問題が大きくなることが、立法者たちによってあらかじめ予測されていたことが議事録から読み取れます。
そして、2001年当時の時点では、政府は出会い系サイトは「現時点で児童買春の温床となっているとまでは必ずしも言えない」(黒澤正和警察庁生活安全局長)との見解を示しながらも、「実態の推移に注視し、必要な対策について検討を進める」との認識を示してており、出会い系サイト規制は、立法者たちにとって既定路線だったことが読み取れます。
以下、民主党の細川律夫議員質疑から抜粋引用します。
|
○細川委員
そこで、出会い系サイトについてでありますけれども、確かに今は児童買春への契機ということは大きくないようでございますけれども、店舗を持たないテレクラと大変似ているわけですね。そうしますと、出会い系サイトの方がさらに児童買春の契機として大きな意味を持ってくるのではないか。今でも出会い系サイトは、別のいわゆる重要犯罪なんか、大変な犯罪が起こっているわけなんです。
そこでお聞きしますけれども、もちろん、一般的な自由の制限につながりかねない問題だから、拙速にはできないと思いますけれども、今回の法案がうまくいけばいくほどそういう出会い系サイトの方に移っていくのではないか。こういうことについてどういうふうに取り組んでいくかという問題があろうかと思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。
○黒澤政府参考人 委員御指摘のような懸念はあろうかと思います。このテレホンクラブ営業につきましては、委員も御承知かと思いますが、平成十二年中でございますけれども、児童買春事件の約五割がテレホンクラブ利用にかかわるものでありまして、児童買春の温床となっている実態が存在をいたしまして、社会的にも、女子少年の援助交際を誘発、助長する悪質な営業であるという認識が定着していると認められるわけですが、いわゆる出会い系サイトにつきましては、それが現時点で児童買春の温床となっているとまでは必ずしも言えない。これはあくまでも事件の検挙件数で申し上げますと、平成十二年中に九百四件の児童買春事件を検挙いたしておりますけれども、出会い系サイトにかかわるものは三十九件でございまして、今回の改正案では対象とはしなかったわけでございます。
今後、出会い系サイトにつきまして、いろいろな問題があるわけでございますけれども、児童買春の温床という点について申しますならば十分こういったことが懸念される、十分にあり得ると考えられますことから、その実態の推移につきましては注視をいたしまして、必要な対策について検討を進めてまいりたいと存じます。
|
|
ということは、逆に言えば、風営法改正によって出会い系サイト問題が加速し、いたちごっこのイタチを政府が演じることになることが2001年の時点で予測されていた、ということになるだろうと思われます。
ぶっちゃけた話、出会い系サイトを作っているのはその主催者ですが、出会い系サイトの利用者を増やし、出会い系サイトに大きな利益をもたらした最大の発生原因は政府によるテレクラ規制だった、ということです。
出会い系サイトにたくさん人を集め儲けさせる原因を作った政府にこそ、出会い系サイト問題の責任の一端がありますし、また、その政府案に賛成した全政党(風適法改正案は全会一致可決)にも、立法責任があります。
二年前の風営法改正案を提出した政府の提案こそ、自己批判が求められるべきなのに、その事実を無視し、まったく反省のないまま出会い系サイトの規制を提言する政府の姿勢は、無責任であり、解決能力も当事者能力も無いと言わざるを得ません。
福田官房長官は、前述の内閣委員会質疑で出会い系規制について、「法規制についても検討してまいりたい」と明言しています。ということは、出会い系サイト規制は、政府にとっては二年前から規程路線だったということです。
問題の原因を作っておいて、問題が発生すると発生原因を他に押し付けて解決に奔走する政府・警察庁の姿は、火をつけて消火する自作自演の消防士=マッチポンプと同じであり、無責任というよりありません。
そんな政府に出会い系サイト問題をあれこれ論じる資格はありません。
出会い系サイト規制は、テレクラ風俗業規制の延長ではなくて、インターネットの有害情報規制という政治の流れのひとつです。ですから、出会い系サイト規制が実施されれば、それでインターネット規制の完了するわけではありません。それは、たとえば塩田晋議員(自由党)の質疑からも明らかです。
|
○塩田委員 出会い系サイトにつきましては、非常に有効な手段であるということで、正常に利用されている場合は非常にいいことだと思うんですが、この問題でも、社会現象として、出会い系サイトの方に規制が今余りないとすれば比重が移っていくんじゃないかという懸念もありますし、また、現に、ある高裁の判事自体がこれを利用して重大な問題になっているということもあるわけですが、今後、そういう出会い系サイトについての対策が必要だと思います。まだまだウエートは少ないと思うんですけれども、今後広がる可能性があります。これについて十分な対策、方策を考えていただきたいと思います。
それから、こういった情報化の急激なテンポでの進展によってグローバル化していると思うんです。諸外国はこの種の規制なり対策はどうしているか、主なところで結構ですから、諸外国の状況。それから、これがインターネット等を通じまして国際化していますから、我が国はそういった国際化の中での対策をどういうふうに今後考えて対策していかれるのか。また、国際的な協力というものが必要だと思うんですが、それについて、情報、わかっている範囲におきまして御説明いただきたいと思います。
○黒澤政府参考人 テレホンクラブに対する諸外国の規制の状況でございますけれども、アジア諸国、少なくとも台湾や韓国におきましては、我が国のテレホンクラブとほぼ同様の営業が存在をいたしますが、これらの営業を規制する法令は存在しないと承知をいたしております。
なお、韓国におきましては、日本と同様に、テレホンクラブを利用した児童買春が問題となっておると聞き及んでおるところでございます。
それから、インターネット上の有害情報等への対策を講じるに当たっては、国際的な協力が不可欠でございます。委員御指摘のとおりでございます。現在、インターネット上のわいせつ物、児童ポルノを初めとする有害情報につきましては、刑法でありますとか児童買春、児童ポルノ法、関係法令の適用による厳正な取り締まりを行っておるところでございますが、こういった取り締まりとともに、やはりインターネット上の有害情報に関する広報啓発等の施策を推進する、そしてまた諸外国の関係機関との協力、これが絶対不可欠でございます。
警察庁におきましては、国際的な協力体制の構築に向けた取り組みを強化いたしておるところでございます。各種の国際会議に職員を派遣いたしまして、関係省庁とも連携をとりながら、国際的な取り組み体制の構築に向けまして、諸外国の政府関係者等との意見交換、情報交換を行うなどしてきておるところでございます。
また、ことしの十二月でございますけれども、横浜において児童の商業的性的搾取に反対する世界会議が開催されることになっておりまして、警察庁といたしましても、主催国の一員として、各国から参加する多数の政府関係者、NGO等との積極的な意見交換を予定いたしておるところでございます。
今後とも、あらゆる機会を通じまして国際的な協力体制の構築に努め、インターネット上の有害情報等に対する総合的かつ実効ある対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
|
|
黒澤正和警察庁生活安全局長の答弁から、出会い系サイト規制は最初の血祭りターゲットであって、ネットのエロ画像の国際的規制が当面求めるべき到達点だということが読み取れます。
インターネットポルノ規制条約は、既に事務レベル当局間で調整が進んでいるといわれておりますので、あとは国内事情が許せば、いつでも条約締結→国内法整備へと、一気に規制は進むと予測されます。
もちろん、このような「有害」情報規制が、青少年の健全育成を解決するとの科学的根拠は存在しませんし、情報規制によって青少年が健全になったとい
う科学的証明も存在しません。
出会い系サイト規制を求める「中間検討案」では、「出会い系サイト」というインターネットコンテンツついての、限定性のある明瞭な定義をきちんと示し得ていません。なにを規制するべきかが未確定なのに、規制だけが先行して決定されてゆくという立法のあり様には問題があります。
昨年2002年11月21日、衆議院青少年問題特別委員会における山谷えり子議員(新保守党、当時民主党)の質疑で、鈴木康雄総務省総合通信基盤局電気通信事業部長は、このように答弁しています。
・第155回国会 青少年問題に関する特別委員会 第2号(2002/11/21)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/007315520021121002.htm
|
○山谷委員
青少年育成推進会議の申し合わせを受けて、先週、プロバイダー、事業者等に適切な措置を要請なさったということでございますけれども、こちらの方も、ただ要請するだけではなくて、今後、自主規制の状況などを定期的にチェックして、話し合いの場所を持っていただきたいというふうに思っております。
それから、今、高校生の八一・五%が携帯を持っております。検挙事件のうち、出会い系サイトへの接続者が九八%であった。となれば、インターネット接続のできる移動電気通信事業者に対してフィルタリングサービスを実施するような自主的な取り組みを要請すべきではないかというふうに考えておりますけれども、その辺はいかがでございましょうか。
○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
ただいま御指摘ございましたように、インターネットあるいは携帯電話の普及に伴いまして、携帯電話からインターネットへのアクセスが容易になりまして、インターネット上のいわゆる出会い系サイトが青少年の健全な成長に有害な影響を及ぼしているということは重々承知いたしております。
先ほども御質問ございました中にありましたように、官房長官からお答え申し上げた推進会議の要請を受けまして、私どもも関連事業者に要請をいたしまして、モデル契約約款その他の再度点検をお願いしているところでございます。
また、今お話のございました、携帯電話事業者がフィルタリングサービスを提供するようなものにつきまして、技術的には、コンテンツの中に特定の単語だとか表現があった場合に自動的に判別する、そういったものが含まれるようなコンテンツへのアクセスを遮断するということが考えられますが、しかしながら、携帯端末におきましては、現在のところ、この種のソフトウエアが実現していないということと、もう一つ、出会い系サイトと申してもいろいろございまして、何を青少年にとって有害な出会い系サイトと判断するかといった観点の問題もございます。
先ほど警察庁の方からも御答弁ございましたように、関係事業者も協力して必要な研究会に入っておりますので、そこでまた検討させていただきたいと思っております。
○山谷委員 携帯端末でのコントロールではなくて、ネットワーク網の方でコントロールというのは可能だと思います。確かに、おっしゃったような問題点がございまして、一〇〇%捕捉するということは難しいというふうに思いますけれども、かなりの部分が捕捉できるというような技術は既に持っているというふうに考えておりますが、その辺はいかがでございましょうか。
○鈴木政府参考人 ただいま御指摘のございましたように、携帯電話ではない、いわゆるパソコンを通じてのインターネットへのアクセスにつきましては、既にそうした技術ができておりますし、そのようなサービスもネットワーク側で提供いたしております。
しかしながら、携帯電話につきましては、端末の方で一定の操作をしなければいけないところもございまして、残念ながら、そのようなことはまだできておりません。今後、携帯電話事業者と、どういったことをすれば効果的な対策が打てるのか、相談してまいりたいと思っております。
○山谷委員 これは決意さえあれば相当できるというふうに思いますので、ぜひ御決意くださいまして進めていただきたいと思います。取扱説明書に書き込むとか、その程度のことでは全く効果がないというふうに思っておりますので、子供たちを守っていただきたいと思います。
|
|
何を青少年にとって有害な出会い系サイトと判断するのか、科学的な根拠に基づく明確な定義は、二年前も現在も変化がありません。定義無き規制など無意味です。
山谷議員は、端末でフィルタリングして情報を遮断できないなら、ネットワーク側で遮断してしまえと主張しています。ですが、そのような規制手法は、中国政府が民主化運動弾圧のために運動指導者の政治的言論をネットワークから遮断しているのとなにもかわりません。子どもの人権条約の情報権規程にも反するのではないでしょうか。
最後に、東京都青少年問題協議会の委員だった奥平康弘先生(憲法学・人権法)による「第22期東京都青少年問題協議会中間答申に対する反対意見」が、出会い系サイト問題を考えるうえで参考になりますので紹介します。
中間答申についての反対意見
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/1997/04/40743202.HTM
この「反対意見」は、第22期東京都青少年問題協議会の多数意見としてつくられた中間答申への反対意見で、具体的には、青少年健全育成条例の「買春等処罰規定」の創設に対する反対意見です。
奥平先生はこう書いています。
|
「処罰」論が憂うべき状況として重視するのは、「性の商品化」という大きな文化状況である。そこから出発するのは、正当であって、異論がない。
しかしながら、次のような配慮があるべきである。「性の商品化」は、いま「文化状況」といったが、それはあらゆるものを「商品化」せずんばやまざる資本主義的な大状況の一現象であるにとどまる。それは、われわれの生活環境に広く深く染み透っている現代文化の一部分なのである。もし「性の商品化」の犠牲者・被害者が青少年であるというのであれば、じつは成人もまた犠牲者・被害者であるといえるほどに、「性の商品化」は普遍的な効果をもって、われわれにせまっている。この点では、青少年だけが特殊的に保護に値するとはいえない問題状況にあるのである。
|
|
奥平先生の説く「青少年にとって有害なものは成人にとっても有害である」という平等性のロジックは、憲法学ではおなじみのもので、たとえば母性保護政策として女性の炭坑労働を禁じる労働法に対し「女性にとって炭坑労働が危険なら男性にとっても危険である」という憲法の平等権解釈がその典型です。
奥平先生の言う平等性のロジックは、「性の商品化」の問題は青少年対策としてではなく社会全体として考えるべき問題であり、青少年に対する対策として現象を表層的に規制することは問題の解決にならない、ということなのだと思います。
この点、出会い系サイトで「ゴムつき3万円」の呼びかけメールをポストしている女の子たちの方が、出会い系規制を主張してい人たちよりもよほど「性の商品化」を客観視していますし、そのような「性の商品化」状況を無効化しようと努力していると思います。
出会い系サイトを規制すれば、とりあえず「ゴムつき3万円」の呼びかけメールは激減するでしょう。ですが、出会い系サイトは「性の商品化」の媒介ではあっても原因ではないので、「性の商品化」状況が消えてなくなることはなく、ゴム風船のどこかを押せばどこかがふくらむのと同様、別な形で問題が噴出するだけだと思います。
規制しようとしている大人たちより、セックスフレンド募集広告出してる女の子の方が、「性の商品化」に自覚的だという事実を、まず出会い系規制の議論の前提に置かなければなりません。中間検討案にはこうした視点が欠落しています。
奥平先生は、さらにこう指摘します。
|
女と男の性関係(ここでは、標準な異性間を取り上げるのだが)は、いささか複雑微妙な諸要素から成り立つ。一見、単に金銭を媒介とした肉体のやりとりに見えるばあいでも、そのやりとりのはじめや途中ややりとりの最後には、単に金銭関係ではない何物かが入り込んでくるかもしれない。金銭授受が唯一の、あるいは主要な要素ではないかもしれないのである。
(たとえば、いわゆる「援助交際」という名の性関係のありようのなかに、多くの人はsingle outした動機によって捉え、裁断する。が、どうも、そういうとらえ方はおかしいのではなかろうかという考えに誘うのが、河合隼雄「『援助交際』というムーブメント」〈「世界」1997年3月号137頁〉である。
また、私の理解によれば、村上龍「ラブ&ポップ」〈幻冬舎 1996年〉は、性関係を「文学的な関係」と捉える私の考えを作品化したものといえる。)。
こうした性格の人間関係でありうる世界に、金銭媒介要素を唯一絶対の判定基準にして、刑罰権力をもって公権力が入り込むのは、いかがなものだろうか(すなわち、やり方として適切だろうか、効果として有効であろうかという点に疑問を感ずる。)。
|
|
奥平先生の問題提起は、法の強制で性的関係を規律するときに、経済的要素を唯一絶対の判定基準にして私生活に公権力が介入するということが、はたして多様な価値観の共存が前提となる民主主義社会において許されるのか、効果があるのか、という疑問を提起しているのだろうと思います。
そこで出会い系サイト規制を考える上でキーワードとなる言葉は、商業的搾取の「搾取」という言葉です。
女の子自身が「ゴムつき3万円」メールを書いて恋愛感情の無い状態でセックスすることは、たしかに金銭を媒介しているという意味では「商業的」でしょうが、はたして「搾取」とまでと言えるでしょうか?
児童買春ポルノ処罰法がつくられる立法動機となった児童の商業的搾取状況は、経済的弱者である児童が経済的強者である大人によって搾取されているという状況が前提となっていると思われます。
だとするならば、児童買春ポルノ規正法の立法動機を、そのまま出会い系規制に置き換えることはできないでしょうし、別動機として提案するなら、その
新たな動機というものをきちんと国民に説明するべきですが、国民が納得できるような説明はありません。
「援助交際」の当事者となる青少年に性的自己決定能力があるかどうかという点についても、奥平先生は見解を表明しています。
|
青少年が一般的に−−すなわち、どんな関係においても−−「性的自己決定能力」を欠いているとか劣っているとは考えられない。青少年はそれなりに「性的自己決定能力」を具えていて、その範囲内では成人と同じように性的な自由を権利として行使しうる場合があることを、暗黙のうちに認めている、といえる。ここに、「処罰」論のある種の開明性をうかがえるのであるが、しかし、「金銭的な等価交換」モメントが入り込むやいなや、俄然、青少年の「被害」を語り、青少年保護の必要性が強調されるという展開になっている。ここには、論理のうえで奇妙な亀裂がうかがえるのである。どういうことかというと、現代の青少年は、他の点では性的自己決定能力をちゃんと具え、これをはたらかせることができるが、彼等は、ひとたび「金銭的な等価交換」が問題になる局面に身をおけば、とたんに「性的自己決定能力」を失ってしまい、その結果、性行為参加への同意がありえたように見える場合であってもそれは「真正」の同意たりえないと断定するのが「処罰」論の立場である。
|
|
青少年に性的自己決定能力があるという指摘は、東京都の援助交際処罰条例だけではなく、出会い系サイト規制についてはもあてはまると思われます。