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最高裁「石に泳ぐ魚」判決に対する世論
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2002.09.29


連絡網AMIメーリングリストより

Date: Sun, 29 Sep 2002 23:10:25 +0900
Subject: [ami-ml 1907] Fw: 最高裁「石に泳ぐ魚」出版差止裁判

 「石に泳ぐ魚」出版差止裁判について、プレス各社が社説を掲載しています。

 以下、抜粋引用。

■沖縄タイムス 
・社説<2002年9月26日>
出版差し止め 私小説も人権問われる
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20020926.html

今回の判決によって表現の自由よりプライバシーの権利が上位にある、という流れになってはならないだろう。判決は、個別のケースに対する判断であり、憲法が保障する表現の自由は当然これからも尊重されなければならないからである。」

この判決を境に、日本の文壇で大きな位置を占める「私小説」の自由な表現までが縛られることがあってはならない。


■南日本新聞
・南風録 9月25日 【出版差し止め】プライバシー優先の流れが強まる
http://www.minaminippon.co.jp/2000syasetu/2002/sya020925.htm
1つの腐ったリンゴを見つけて箱ごと捨てるのは早計だ。最高裁判決は出版差し止めの要件を述べていない。今後とも個々の事件について判断されることになりそうだが、裁判所は一段とプライバシー重視の観点から判断を下すことが予想される。

■信濃毎日新聞
・2002年9月26 社説=出版差し止め 繰り返したくはない
http://www.shinmai.co.jp/news/2002/09/26/006.htm

一つの判例が示されたからと言って、これから先、広く差し止めの道が開かれるようなことがあってはならない。

プライバシー保護が常に表現の自由より優先されるというわけでもない。小説の形で不正を暴くといった手法もあり得る。


■中日新聞/東京新聞/北陸中日新聞
・社説 9月25日 もっと慎重な判断を
http://www.chunichi.co.jp/00/sha/20020925/col_____sha_____001.shtml
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20020925/col_____sha_____003.shtml
http://www.hokuriku.chunichi.co.jp/00/sha/20020925/col_____sha_____001.shtml

表現の自由は最も重要な憲法原則であり、出版の事前差し止めには極めて慎重でなければならない。弁論も行わずに形式的な処理ですませた最高裁の判決で文学が衰退することを恐れる。

第三小法廷は『内容が真実ではなく、またはもっぱら公益目的ではなく、被害者が著しく回復困難な損害を被る恐れがある表現は事前差し止めも許される』という大法廷判例を引用して原判決を容認した。しかし、この判例は名誉棄損に関するものであり、しかも事実報道をめぐる判断である。フィクションである小説に含まれるプライバシー、という別の要素が争点である今度の事件には必ずしも当てはまらない。

虚実ない交ぜにしてイメージをふくらませながら書く小説と事実の報道とでは、含まれる情報に関する評価は異なってもおかしくない。プライバシーとして保護されるべき情報とは、「公表されたくないことが相当な私的情報」に限られる。まして、一般読者にはモデルを特定できなくても、本人の知人には分かるから書いてはいけない、となればモデル小説は成り立たない。


■琉球新報
・社説 2002年9月26日(木)出版差し止め・強まる人権重視の流れ
http://www.ryukyushimpo.co.jp/shasetu/sha20/s020926.html#shasetu_2

 最高裁判決に懐疑的な社説は以上です。

 最高裁判決に肯定的な社説も、一部の新聞社にありました。各URLを参照してください。(道新社説は近日消去されますので、読む方は早めにダウン ロードを)

■北海道新聞
・社説 出版差し止め*判決が問う「小説作法」(9月26日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/sch-kiji.php3?&dd=20020926&kiji=0032.200209265220
■神戸新聞
・社説 2002/09/25 出版差し止め/社会の流れ汲んだ判決
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/020925ja14790.html

 

 私の意見としては、中日新聞の社説とほぼ同じです。(※)

 北方ジャーナル事件の判例を流用した「石に泳ぐ魚」事件最高裁判決は、事実を前提とした報道の名誉毀損判断を、架空の物語(フィクション)にすぎない小説にあてはめたという点で問題があります。

 実在児童への虐待と架空絵画の児童キャラへの虐待表現を同一視する事が不自然である様に、「石に泳ぐ魚」事件最高裁判決の判断も、不自然です。

 フィクションである情報をプライバシー権などの人権と比較し、言論表現の自由を制限するという点で、「石に泳ぐ魚」出版差止裁判は、児童ポルノ法改 正議論で検討されようとしている絵画規制と、共通点があります。「石に泳ぐ魚」事件最高裁判決は、児童ポルノ法改正審議になんらかの影響を与える可能性があると思います。

 また、プライバシー保護を絶対最優先の権利として言論表現の自由を抑制し得るという点では、最高裁判決は個人情報保護法案、人権擁護法案とも類似しており、個人情報保護法案、人権擁護法案の修正審議にも影響を与えそうです。

 児童ポルノ法改正の議論が近づき、次期国会で成立される可能性が高いメディア規制法案が審議される直前のこの時期に、「石に泳ぐ魚」最高裁判決が出る。このタイミングの一致は、偶然にしてはできすぎです。

 小説やマンガによるプライバシー侵害事件は、人権擁護法案が成立すれば、人権委員会による救済対象となる可能性があります。となれば将来、政府直下の中央集権的な人権委員会の判断や指導が、わたしたちのビジュアル表現活動に大きな影響力を持つことが予想されます。「石に泳ぐ魚」裁判判決のプライバシー最優先の考え方は、人権委員会の判断や指導にも活かされることになるでしょう。

 メディア規制に熱心な保守勢力などは、「石に泳ぐ魚」出版差止裁判を特殊な考え方を持つ一小説家が起こしたイレギュラーな事件として処理し、柳美里 氏を言論表現界から孤立させ、メディア規制反対運動の過程で連帯した言論表現界を分断させたいようです。柳美里氏を孤立させるような言動は、メディア 規制に熱心な保守勢力の思惑を助け、私たち表現者自身の立場を苦しめる結果につながると、私は考えます。

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※ 国家が絶対に介入できない言論の範疇を認めるか否かという点では、私と中日新聞とは意見が異なります。最高裁「石に泳ぐ魚」出版差止裁判の加筆部分を参照のこと。

 

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(キタノ)
ki@tree.odn.ne.jp
http://zirr.infoseek.ne.jp/
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