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最高裁「石に泳ぐ魚」出版差止裁判
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2002.09.26


連絡網AMIメーリングリストより

Date: Thu, 26 Sep 2002 07:49:56 +0900
From: kitano
Subject: [ami-ml 1891] 最高裁「石に泳ぐ魚」出版差止裁判

 小説が出版差止めとなったことが大きく報道されています。 今回の最高裁判所判決は、小説だけの問題ではなく、映画、ドラマ、舞台、マンガ、アニメ、ゲーム、その他諸々のビジュアル表現においても、重要な意味を持つことになるだろうと思います。

 個保法案や人権擁護法案の修正審議にも影響が出るかもしれません。

 創作者の個人的な体験や創作者が知り得た個人情報を題材に創作されたマンガやゲーム作品を、みなさんはご存知だと思います。みなさん自身、個人情報を題材に作品を作ったことがあったり、作ろうとしたこともあるでしょう。

 今回の判決により、会社から絶版通告を受けたとか、個人情報を題材にして作品をつくる過程で編集から表現の変更を迫られたとか、ボツになったとか、自己体験をもとに作品を作ろうと思ったが判決が出たから作るのをあきらめた、というようなことが起るかもしれません。

 そういった情報や悩み、あるいは解決方法(たとえば、違法にならないような個人情報の表現の仕方とか)がありましたら、お教えください。

■関連報道
・<柳美里さん>小説「石に泳ぐ魚」出版差し止め 最高裁判決 - 毎日新聞 - 社会
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020925-00002082-mai-soci
・柳美里さん敗訴確定、最高裁が出版差し止め認める - 読売新聞 - 社会
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020924-00000212-yom-soci
・<出版差し止め>柳美里さんの小説 「人格権」で最高裁が初判決 -毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020924-00003081-mai-soci
・<出版差し止め>柳さんの「石に泳ぐ魚」 最高裁判決 - 毎日新聞 - 社会
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020924-00001081-mai-soci
・<柳美里さん>小説「石に泳ぐ魚」出版差し止めへ24日に判決 - 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020914-00000055-mai-soci
・表現の自由をあまりに軽視 最高裁判決で柳さん会見(共同通信)
http://channel.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20020924/20020924a4190.html
・柳美里さん最高裁で敗訴、出版差し止め(夕刊フジ)
http://channel.goo.ne.jp/news/fuji/geino/20020924/20020924-38.html
・柳美里さん敗訴確定(産経新聞)
http://channel.goo.ne.jp/news/sankei/shakai/20020924/SHAK-0924-02-15-40.html
・柳美里の小説、出版差し止めへ−最高裁 ZAKZAK
http://www.zakzak.co.jp/top/t-2002_09/3t2002091324.html
・京都新聞 初の小説差し止め、確定へ 柳美里さんのデビュー作
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2002sep/13/K20020913MKB2Z100000163.html
・東京新聞 最高裁 柳さん上告24日棄却 小説出版差し止めへ
http://www.tokyo-np.co.jp/media-k/02091401.html

■関連情報
・弁護士佃克彦の事件ファイル
「石に泳ぐ魚」出版差止事件 (モデル=原告側弁護士から見た裁判)
http://www.houtal.com/journal/report/etc/010604.html
http://www.houtal.com/journal/report/etc/010625.html
http://www.houtal.com/journal/report/etc/010709.html
http://www.houtal.com/journal/report/etc/020610.html
http://www.houtal.com/journal/report/etc/020715.html
http://www.houtal.com/journal/report/etc/020819.html

・霧霧迷(霧小舎捕人)『石に泳ぐ魚』裁判で思うこと
http://www1.ttcn.ne.jp/~kirikirimai/chronicle/a-line/a-line.html

■Web新潮(「石に泳ぐ魚」の情報なし)
http://www.webshincho.com/

■amazon (「石に泳ぐ魚」の情報なし)
http://www.amazon.co.jp/

■日本ペンクラブ声明(「石に泳ぐ魚」の情報なし)
http://www.japanpen.or.jp/honkan/seimei.html

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加筆。

「石に泳ぐ魚」事件に対する評価でよくある誤解は、「作者はモデルの同意を得ないで勝手に書いて出版しようとしたのは許せない」という批判です。モデルは「石に泳ぐ魚」の出版それ自体には同意しているんですよ。しかも口頭でだけではなくて、第三者立合いのもとできちんとした文書にもなっているわけです。

問題は、出版に同意するという前提として、モデルはどこまで修正条件を作者に要求できるのか、という点です。

書き替える権利がモデルにあるとしたら、それはどこまでの範囲なのか。モデルだからといって、モデルになった部分とは無関係な部分についてまでアレコ口出しして作品を書き替える権利が認められるわけではないでしょうから、そこをきちんと作品の内容を踏まえた判断が必要です。

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加筆。

「人を傷つける言論はすべて認められないから排除すべきである」という主張を、よく見かけます。たしかにプライバシーの保護は必要です。

しかし、プライバシーはすべてに優先する絶対的な権利ではないと、私は考えます。

この議論は言論表現の自由の合憲性基準問題と重なる大きな問題なのでそのうちきちんと考えをまとめたいと思っていますが、私は、一定の範疇の言論表現については、絶対的に国家からの統制は排除されるべきだと考えています。その理由は、民主主義社会の維持にとって、公共性のある一定の範疇の言論表現の保護がどうしても必要だからです。

一定の範疇とは、民主主義的秩序維持の前提となる以下の言論表現活動を指します。


1、政治的言論、公務に関する情報
2、公共の利害に関する情報、報道
3、評論、芸術、社会的事象や社会問題をテーマとする思想表現

この三つの範疇に属する情報、…人の心を理性・感情両面から動かす公的価値を持つ情報…は、国家から不可侵であるべきです。ポイントは、その情報にどれだけの公共性(パブリシティ)か゜あるか、という点でしょうね。 たとえば、「石に泳ぐ魚」については、プライバシー対表現の自由という二項対立としてとらえるのではなく、「石に泳ぐ魚」が表現する「人はなぜ恨み、生きるのか」というテーマに芸術として保護されるパブリシティがあるかどうか、モデルを題材にした表現がその作品のパブリシティにとって必要だったか否かという議論については、おおいにやるべきだったと思うし、そのような議論によってプライバシー対表現の自由の対立問題はとらえ直されるべきではなかったかと思うのです。

もちろん、すべての報道や芸術を"個人が"受け入れろと言いたいのではありません。国や社会をどうすべきなのかという公共性のある問題については、各個人の価値観に基づいて自由に評価する環境が整っていることが民主主義社会にとって必要で、だからそのような環境を維持するためには"国家が"公共性のある一定の範疇の言論表現活動に介入したりその優劣を判定すべきではない、ということです。

報道ならその報道活動自体への批判活動は当然あってしかるべきですし、芸術作品に対しても展示や流通の選択や批評などによって私人間における評価は活発になされるべきです。というか、「よい芸術とは何か」「よい報道とは何か」といったテーマについて個人が考え評価する民間(業界)の社会的システムが不完全であるからこそ、国家権力の介入の必要性が高まってしまう、という側面もあるのではないでしょうか。

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(キタノ)
ki@tree.odn.ne.jp
http://zirr.infoseek.ne.jp/
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