To: shonen-k@npa.go.jp
Subject: 「少年警察活動規則試案」に対する意見
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警察庁生活安全局少年課法令係御中
「少年警察活動規則試案」パブリックコメント係様
私たちは、マンガ、ゲームなどビジュアル文化の権利保護について情報交流をしているグループ「連絡網AMI」の有志です。この度、警察庁において「少年警察活動規則試案」についての意見募集がありましたので、個人の資格で、パブリックコメントを提出させていただきます。関係者各位へお取次ぎいただきご検討いただきますよう、宜しくお願い申し上げます。
連絡網AMI有志一同
コメント提出人 北野 桂
住所
電話番号
kitano@mc.neweb.ne.jp
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「少年警察活動規則試案」パブリックコメント
1 趣旨について
公共の安全と秩序の維持という警察の責務を果たすため、その責務上必要な少年の非行の防止及び保護を実施することは、必要なことである。この警察の責務の範囲内に限っては、少年の健全な育成を図るための警察活動に関し、必要な事項を定めるという「少年警察活動規則試案」(以下「試案」と呼ぶ)の趣旨に賛成である。
しかし、少年の健全育成は一義的には親権者の責任であり、警察の責務ではない。
「少年の健全な育成」なる倫理的価値観は、道義的、宗教的、民族的、その他の個人的価値観により多様であり、一概に規程できない。
例えば、ある特定宗教の信者にとって不健全な少年であったとしても、別な信者にとっては健全な少年であることもあり得る。また例えば、一部宗教者にとって断食期にハンバーグを販売することが少年にとって宗教的に不健全であるとして、少年の健全な育成を図るためハンバーグを販売したハンバーガーショップを指導する権限は、警察その他の公権力には容認され得ない。同様に、たとえば、同性間の恋愛感情を表現するマンガ等を少年に販売することが一部宗教者の宗教観にとって少年の健全育成に反するとしても、書店の販売行為やマンガ家等の創作活動に「同性愛は神の秩序に反するからやめろ」と指導する権限は、警察には容認され得ない。
警察の活動は、警察法第二条で規程されているように、「厳格に責務の範囲内に限られるべきものであって、その責務の遂行に当っては不偏不党且つ公平中立を旨とし、憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる権限の濫用があってはならない」のである。
したがって、趣旨(1)(2)は、次のように改めるべきである。
「(1) この規則は、少年の非行の防止及び保護を通じて、警察の責務の範囲内で実施される少年の健全な育成を図るための警察活動(「少年警察活動」といいます。)に関し、必要な事項を定めます。
(2) 少年警察活動は、警察法、警察官職務執行法、少年法、刑事訴訟法、児童福祉法、犯罪捜査規範その他、従前の法令(子どもの人権条約、地方公共団体の条例又は規則を含みます。)の範囲内で実施します。」
2 定義について
定義「カ」の「その他少年の健全な育成を阻害する行為」は抽象的であり、具体的に何を示すのか不明であり、限定的とは言い難い。「犯罪では無いが少年の健全な育成を害する行為」の具体的例示が無い以上、定義「カ」は、警察の責務の逸脱範囲を限定する定義として機能しない。
したがって、定義「カ」は、単に
「犯罪により被害を受けた少年」
とすべきである。
3 少年警察活動の基本について
1で述べたように、少年警察活動における「少年の健全な育成」という考え方には、価値観の相違により多様な考え方があり得る。また2で述べたように、「犯罪では無いが少年の健全な育成を阻害する行為」という定義は抽象的、非限定的であり、その解釈は広範である。
したがって、定義解釈の広範さにより警察の少年警察活動が警察法第二条を逸脱することのないよう、その旨「3少年警察活動の基本」に、下記の通り、活動対象を限定して盛り込むべきであると考える。
「カ 少年警察活動は、公共の安全と秩序の維持という警察の責務の範囲内で実施するものとします。法令の規程がある場合を除き、少年警察活動によって子どもの人権、市民的諸人権、親権、教育機関の活動を、制限し得るものと解釈されてはなりません。」
4、5について
コメントなし。
6 早期発見について
「試案」によれば、早期発見のための警察の街頭補導には「被害少年」を対象とした活動が含まれる。「被害少年」は、定義上、違法ではないが健全な育成を阻害された少年に対する活動についても、警察は関与できることになる。
たとえば、コンビニエンスストアが少年にある種のマンガ等を立ち読みさせ、販売することが「少年の健全な育成を阻害する行為」と警察が判断した場合、その「被害少年」を補導したり、店、コンビニエンス協会、著者などに出版物の販売や著作流通の自粛を要請するなどの措置が、マンガ等内容の不健全性につき警察官の任意の判断でなされるおそれがある。
このようなケースでは、警察の責務を逸脱する活動となるおそれがあるから、被害少年に対する補導活動や関係機関との連携については、法令違反の結果として発生する被害少年に限って少年警察活動ができるよう、警察の警察活動の歯止めとして以下のような修正が必要であると考える。
「非行少年、不良行為少年、法令上の被害少年及び要保護少年については、街頭補導及び少年相談を適切に実施し、並びに警察の各部門間及び警察と関係機関の連携を図り、早期に発見するように努めるものとします。」
7 街頭補導について
7(2)で規程する「被害少年」の早期発見のための「その他の関係機関」及び「その他の関係者」に対して協力を求める点は、6で述べた通りの問題が危惧されることから、以下のような修正が必要であると考える。
「(2) 非行少年、不良行為少年、法令上の被害少年及び要保護少年を早期に発見するため必要があるときは、街頭補導の実施に当たり、学校その他の関係機関、少年の健全な育成のための活動を行うボランティアその他の関係者の任意協力を求めるものとします。」
8、9、10について
コメントなし。
11 有害環境の影響の排除に係る都道府県知事への連絡等について
「試案」11の「少年が容易に見ることができるような状態で性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品が販売されていることその他の少年の心身に有害な影響を与える」という部分は、性的なメディアが子どもを性的にする、或いは暴力的なメディアが子どもを暴力的にするといういわゆる「強力効果論」を前提としていると思われる。
しかし、この学説の主張根拠となる性的メディアと子どもへの影響の因果関係は、学問上、未だ実証されているとは言えない。
日本国政府も公式見解として、「有害情報への接触が多い少年ほど非行の経験が多いという、そういった、因果関係ではございませんけれども、相関関係があるということが確認されております。」(2000年11月9日の衆議院青少年問題に関する特別委員会/政府参考人川口雄総務庁青少年対策本部次長(当時)発言)と相関関係は認めながらも、因果関係は認めていない。
有害環境の影響の排除に係る都道府県知事への連絡等の立法措置については、自由民主党、保守党、公明党が「青少年環境対策基本法(案)」として立法化を検討したが、与野党、各メディア、国民各層の議論において法案のメディア規制的な問題点が指摘され、国民の理解が得られていない時点での国会提出を見送るとの判断から国会上程にいたらなかったことは、報道等により衆知となっている。
学問的根拠が無く、政府公式見解に矛盾する認識に基づき、国民と各党の理解と合意を得られなかった「青少年環境対策基本法(案)」が求める施策を、警察があえて単独で実施しなければならない理由は無い。また国民への理由の説明も警察庁からは、なされていない。
酒類販売業者等の事業者による顧客の年齢確認など、個別規制を求める法令が存在し、且つ、学問上の有害性の根拠があるものに限り、防犯上の観点から、都道府県知事への連絡等を実施することができるものとするべきである。
したがって、「試案」11は、以下の通り削除修正が必要と考える。
「11 酒類等不健康品排除に係る都道府県知事への連絡等
警察本部長及び警察署長は、たばこ、酒類、その他少年の健康や成長に有害な影響を与える環境(「不健康環境」といいます。)を規制する法令上の物品が販売されていると認めるときは、都道府県知事その他の関係行政機関に対し、その旨を連絡するものとし、広報啓発その他の地域における民間公益活動、酒類販売業者等の事業者による顧客の年齢確認その他の民間における不健康環境による少年の健康に対する影響を排除するための自主的な活動に関し、その求めに応じ、必要な配慮を加えるものとします。 」
12、13、14について
コメントなし。
15 福祉犯の被害少年についての活動について
福祉犯のうち、「児童にその心身に有害な影響を与える行為をさせる犯罪その他の少年の福祉を害する犯罪であって警察庁長官が定めるもの」の対象範囲が不明確、不適当である。
「児童にその心身に有害な影響を与える行為をさせる犯罪その他の少年の福祉を害する犯罪であって警察庁長官が定めるもの」の対象範囲に、たとえば、青少年保護育成条例のいわゆる有害図書類の包括指定乃至個別指定の対象となる映像出版その他の表現物も含まれるとすれば、「試案」15で想定される福祉犯の被害少年の範囲は、きわめて広範且つ必要以上に取扱われるおそれがあり、不適当である。
また、「試案」15では、「防止するため保護者その他の関係者に配慮を求め、及び当該少年の非行を防止するための助言又は指導その他の補導を行い、あわせて、関係行政機関への連絡その他の同種の犯罪の発生を防止するため必要な措置をとる」としている。
もし、「児童にその心身に有害な影響を与える行為をさせる犯罪その他の少年の福祉を害する犯罪であって警察庁長官が定めるもの」の対象範囲に、青少年保護育成条例のいわゆる有害図書類の包括指定または個別指定の対象となる映像出版その他の表現物流通、販売規制も含まれ得るとすれば、警察の少年警察活動における関係者への配慮の要求、関係行政機関への連絡、その他の同種の犯罪の発生を防止するため必要な措置の範囲もまた、きわめて広範且つ必要以上に取扱われ得るおそれがある。
そもそも、有害図書類とみなされる表現物の創作、流通、販売などの活動に、被害者が実在するのか疑問である。架空のキャラクターに性的行為をさせたとしても、それはあくまでも空想表現であり、被害者は存在しない。
また、コメント11で示したように、学問的研究においても政府公式見解においても、メディアの影響力については学問的に因果関係が証明されていない。原因と結果が不明確な相関関係が条件付で容認され得ると仮定しても、原因と結果の明瞭性が求められる犯罪捜査と同様に少年警察活動が行われることは、警察活動上不適当と言わねばならない。
これまで、有害図書類の取組については、業界各団体における自主的な倫理的な取組が行われてきており、また各自治体の青少年対策部門によって関係者への配慮の要求、関係行政機関への連絡、その他の同種の犯罪の発生を防止するため必要な措置が適切に行われてきたところである。
「試案」15は、このような従来の業界の自主的な取組や自治体の青少年対策部門による適切な青少年対策に対し、警察の少年警察活動の名のもとに、新たな、あるいは必要以上に警察独自の指導、配慮要求、発生防止措置がなされるおそれがあり、従来の業界の自主的な取組や自治体青少年対策部門の活動に混乱、矛盾、負担を生じせしめるおそれがある。
したがって、「試案」15は、以下の通り修正すべきと考える。
「15 福祉犯の被害少年についての活動
福祉犯(児童買春に係る犯罪、児童にその心身に有害な影響を与える行為をさせる犯罪その他の少年の福祉を害する犯罪であって、警察庁長官が定めるものをいいます。ただし有害図書類指定等創作活動やメディアを対象とするもの等を除きます)の被害少年については、当該福祉犯に係る捜査のほか、当該少年が再び被害にあうことを防止するため保護者その他の関係者に配慮を求め、及び当該少年の非行を防止するための助言又は指導その他の補導を行い、あわせて、関係行政機関への連絡その他の同種の犯罪の発生を防止するため必要な措置をとるものとします。 」
16、17について
コメントなし。
以上。