メル友出会い系サイト一斉報道
010523
あんぐりニュース
画像はニュースステーション(テレビ朝日系)とニュースアイ(テレビ東京系)が放送したものです。
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なにか新奇な事件が起きると、腹の減った魚のようにリークという名の疑似餌に食いつくマスコミ。
最近突然に目にする様になった「メル友出会い系サイト」一斉報道もその一例だ。
たとえば、5月17日に放送されたニュースステーション。
「メル友殺人」報道に限らず、こうした一斉報道にはパターンがある。
まず殺人事件を報道する。
報道には「事件性」がなければならない。
もちろんニュースソースの一部は警察が漏洩している情報だ。
まだ有罪が確定していない容疑者の顔を映すマスコミ。
誰がいつどこでなにをしたかという情報は、事前に警察がマスコミに流している。
「はいこれでマスコミの商売のネタを提供しましたよ」と、
警察は記者に貸しをつくっているのだ。
もちろんタダで貸しをつくっているのではなく、
なにか警察に都合の悪いことが起きたら、
あるいは都合の良いことをしたい時に、報道しないでもらうために。
次は、“一般人”の声を映し出す。
カメラ写りのいい女の子のコメントは注目を集めやすい。
そのためわざわざ渋谷とかで取材をする。
一般人の映像は、視聴者に無条件の共感と同意を形成する。
「私たち放送局の報道は、あなたたちの生活を考慮しています」という無言の同意を。
放送の世界ではこれを「公益性」と言う。
でもメル友一斉報道にほんとうに公益性があるのだろか?
一般人の次は“識者”の登場だ。
ポイントは“肩書”をはっきり映し出すこと。
いかめしい漢字が多ければ多いほど“肩書”の効果は増大する。
このようにたとえ内容がおかしくても、“肩書”を出すことで
「番組は客観的な分析を行った」という
視聴者と番組との無言の同意がつくられる。
肩書と発言の妥当性を再検証する一般視聴者などいないので、
肩書さえあれば番組としては成立する。
匿名性はまさに“肩書”を重視するマスコミの敵だ。
匿名性に問題があると考える識者をマスコミが重用するのは
マスコミにとって都合のよい社会を維持するための弁解でしかない。
放送局免許の許認可を出している総務省は、匿名性を排除しようとしている。放送局は“お上のご意向”に逆らえない。
最後はコメンテーターが登場。
多くの場合、人畜無害なコメントに終始するが、
メル友一斉報道自体を正当化するという点で共通点がある。
5月21日の夕方に報道された「ニュースアイ」の企画特集「追跡アイ/出会い系サイトの裏側」も同じだ。
「追跡アイ」などといかにも「これは調査報道です」というタイトルを付けているが、
実際は警察のリークキャンペーンに乗っているだけではないか。
やはり最初は京都メル友殺人事件の映像。
事件について詳しく説明する時間がないために、
新聞の見出しを映すことで「事件性」や「公共性」を強調する。
だが、事件の事実をひとつひとつ検証するという姿勢こそ、
調査報道の基本だろう。
新聞見出しに「危険」「トラブル」という文字が踊る。
実は新聞も、放送と同じ一斉報道のパターンを紙面で繰り広げている。
ニュースアイでも一般人を登場。
男性は、犯人に似たイメージの人だけを抜き出して放送している。
女の子の映像は放送局にとって欠かせない“売り物”だ。
次はやはり“識者”の登場。ニュースアイでは、
まず出会い系サイト関係者を音声で登場させた。
グラスハーモニカとかスチームの音とか緊張感を増強する効果音をたくさん使い、「これらの映像は恐ろしい異世界です」というイメージを演出し、効果を増強している。
感情に訴える演出が、日本の報道番組には多すぎる。
出会い系サイトの売り上げは一サイトあたり月10万円。
小さいようだが10サイト運営していれば月100万円。年間1200万円の利益。
しかも資金はパソコンと通信費だけなので、1000万円を超える儲けになる。
スパムメールは迷惑ではないかとの質問に「メールアドレス変えればいい」とのコメント。
視聴者はこの“識者”を悪人と認識しただろう。
実はそれこそがマスコミの狙っていた効果だ。
次の“識者”は、NTTドコモのメールサービスの営業マン。
やっぱり「アドレス変えれ」とのコメント。
スパム対策としては本質的だが、視聴者には「消極的だ」と目に映る。
このようにニュースアイは“悪人を登場させ、
”「積極的な対策はないのか」という視聴者の気分に応えるかのように、、
“正義の”識者を登場させる。
やはり長い“肩書”は欠かせない。
メールログのアドレスの販売相場は5アドレス1円。
5千アドレスで1000円。5万アドレスで1万円になる。
こんなコメントを垂れ流すこと自体が“有害”ではないか、
と疑問に思った視聴者もいるだろう。
個人情報を売買している人がいるからメールアドレスが流出するという分析だ。
この番組を見た視聴者は、個人情報の大量の流出に恐怖し、
個人情報を保護する法律の整備が今すぐ必要だとの想いにとらわれただろう。
このような映像文脈でなされるこのコメントは、
いま国会で議論されている(が実際には議論が進んでいない)「個人情報保護法」(報道統制法)が必要だという気分を盛上げる政治的効果を持つことは間違いない。
だとすればこれはある意味で偏向報道だ。
という抗議の声をニュースアイは予想してか、
反論のコメントもアリバイ的に流している。
しかし、前のコメントですでに“悪人”と視聴者に認識されているので、
事実を言っているだけにもかかわらず、いかがわしい印象を与えただけだろう。
ニュースアイは警察庁の動向を映し出した。
「みんなの安全を守る正義の味方=警察庁」というイメージを演出する。
ナレーターは言う。「警察庁は、出会い系サイトで起こる事件が多発していることから、出会い系サイトを規制する研究会を設置。対策に乗り出した。今、数千とも呼ばれる出会い系サイトの実態は、把握されていない」
「出会い系サイトを規制する研究会」と紹介された警察庁の研究会の正式名称は、
「インターネット上の少年に有害なコンテンツ対策研究会」 。
この研究会は、掲示板の言論表現を警察やプロバイダーなどが取り締まる法律をつくろうという動機を持つ研究会であって、スパムメールを解決するという動機でつくられたわけではない。
番組は意図的に事実を捏造している。
なんと暴力事件や違法な現行犯逮捕を行ったと噂される自警団
=日本ガーディアンエンジェルスの小田君が研究会に参加している。
ひとりだけ浮いた赤い格好の人物が彼だ。
会議に出ている時ぐらい帽子ぬげよ。
番組の女性キャスター佐々木明子が“意見表明”。
「はい、警察庁が中心になって行われているこの出会い系サイト、この研究会ですけれども今年度中には報告書をまとめる予定だということなんですけれどもね。ただメール自体は非常に便利なものですので」
「そうですね、はい」
「迷惑なメールなどの悪い点を見直していく対策が必要だと思います」
警察の規制の主眼は、スパム対策でも携帯電話でもない。
インターネット、特に電子掲示板でおこなわれる情報活動全体への規制と検閲だ!
ネット規制の研究会がいつのまにかすべての人々に希望をもたらす正義の天使のようなイメージに歪められている。
そんなアホなコメントを公共の電波を使って報道番組で言っていいのか!?
女性キャスターのアホな意見を肯定した男性キャスター斉藤一也も同罪だ。
スパムメール対策は既に自衛手段がある。ネットでもネットユーザーたちが警察に依存しない自治的な対策にのりだしている。たとえば、SPAM反対運動掲示板 ではスパムに関する情報を交換して、各自の対策の利便を促している。
NTTドコモも、既に契約者自身で携帯「迷惑メール」の対策をとれる機能を追加したと発表した。詳しくはNTTドコモのいたずらメールについてを参照のこと。
ニュースアイでは法的規制に何の異議も唱えていなかったが、法的規制には問題がある。
アメリカでは連邦も州も実効的な規制をなす反スパム法は否決されつづけており、制定されてもすぐに裁判所が違憲判決を下すという情況だ。言論表現の自由を求める市民とジャーナリストたちの声と行動が、政府関係者、議員、裁判官の良心を動かしたのだ。
企業経営者の高木寛さんも、スパムの法的規制には疑問を呈している。
到着したメールが迷惑なものかどうかは、警察の研究会やプロバイダーが勝手に判断するべきではなく、
受信者が受信者自身の価値判断で判断すべきことだ。
こうした認識を、ニュースアイは一切報道しなかった。
いったいなにを追跡していたのか「追跡アイ」は?!
メル友出会い系サイト一斉報道は、政府や警察のやることに視聴者を賛同させるという効果をもたらした。メル友事件や出会い系サイトは、そのダシに使われただけだ。
メル友出会い系サイト一斉報道に追随したメディアは、メディア規制の報道統制法を作りたい政府・与党やネット規制でリストラから逃れたい警察に、"貸し"を作ったことになる。政府与党や警察に貸しを作れば、情報を独占している彼らから情報を手に入れやすくなり、他のメディアにはない情報を売ることができる。
これはまさに、政官利権とメディアの利権との相互癒着だ。腐っている。
メル友出会い系サイト一斉報道に参加しないメディアは、政府や警察からの信用を得られず、情報のおこぼれから排除されてゆくだろう。ある意味でメル友一斉報道は、メディアが政府や警察の意向に従順であるか否かを試す“踏み絵”のようなものだ。踏み絵を踏まないメディアは、情報独占の恩恵から排除される。
このような情報独占構造や異分子の排除システムを維持し、メル友出会い系一斉報道のような報道腐敗の拠点となっているのが記者クラブだ。記者クラブは、組織犯罪的ともいえる政官利権とメディアの利権との相互癒着の主犯に他ならない。
排他的な報道体制と、その体制によって産み出される誤報や偏向報道は、記者クラブが情報を独占し続けている限り続くだろう。記者クラブは、国民にとって迷惑なだけの存在だ。
その意味で、先日、長野県の田中康夫知事が発表した「『脱・記者クラブ』宣言」は画期的なものだった。まさに
真の県民益にかなう「宣言」だろう。私は田中知事の「『脱・記者クラブ』宣言」への賛同を表明する。